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Dental Talk

医科・歯科特別鼎談「こんな時どうする?」生活習慣病への対応、薬剤投与のポイントなど“歯科で感じるギモン”を医科の先生に伺いました

広島市開業 兵庫内科・肝臓糖尿病クリニック 院長 兵庫 秀幸/広島市開業 広島駅前泌尿器科クリニック 院長 正路 晃一/広島市開業 広島すとう歯科・歯周病クリニック 院長 周藤 巧

目 次

糖尿病患者に歯科治療を行う際の判断基準

[写真] 兵庫 秀幸 先生
広島市開業
兵庫内科・肝臓糖尿病クリニック
院長 兵庫 秀幸

周藤まず兵庫先生の診療範囲からお聞かせください。
兵庫基本的に生活習慣病一般を扱いますが、そのなかで生命予後にもっとも重要な肝臓病と糖尿病を合わせて管理して最終的には「健康長寿に結びつく」というコンセプトで診療しています。現在は、過栄養・運動不足が原因の欧米タイプの糖尿病が増えています。この場合、糖尿病+脂肪肝、脂肪肝炎が同時に進行していくため一括管理が重要になります。
周藤糖尿病と歯周病の相関性についてはいかがお考えでしょうか。
兵庫私たちの間でも歯周病が動脈硬化をはじめ肝臓にも糖尿にも悪い影響を及ぼすことへの理解は急速にひろがっています。ですから、従来の食事・運動・便通管理に加え、歯周病管理を行ったうえで、薬物療法にはどんなものがあるのかを考えながら治療を組み立てるようになっています。
周藤糖尿病でHbA1cが8%を超えた方の場合、当院では外科処置を控えるようにしています。その際、私たちは「HbA1c 7%未満になるようコントールしてください」と安易に言ってしまいますが、実際糖尿病の先生にとっては大変なことではないでしょうか。
兵庫HbA1cの数値が高ければ周術期の血糖コントロールを良くするために、その時期だけインシュリンなどを併用して治るまで専門の先生に血糖コントロールをお願いするということが一つと、外科処置などを行った際に、血糖値が高い状態で放置しておくと傷の治りが悪いとか感染症のリスクにつながりますが、逆にその時の血糖値だけをコントロールする、つまり血糖値はその時点の状態を表す指標であることを理解し、うまく使い分けることがが重要です。ただ、HbA1cが8%ということは、歯科領域だけでなく、網膜や腎臓などいろんな臓器も悪くなっている可能性があるので、歯科治療を急ぐべきかよく検討する必要はあると思います。
周藤緊急の抜歯処置などが必要な場合、その時だけ数値をコントロールするだけで治癒は問題ないのでしょうか。
兵庫緊急処置の際に血糖値を下げるのは、高血糖刺激やそれにまつわる傷つきにくさですから、酸素がないところに限定的に酸素を供給して傷が治るまで良い環境に整えて、傷が治ったら少し悪い環境になっても耐えられる、という考え方です。
周藤なるほど、ではその時だけ血糖値を下げることは治癒に対しても効果があるということなのですね。
兵庫本来は継続的な治療で段階的に改善していく方が良いのですが、緊急処置が必要なケースではそうした方法もあります。時間に余裕がある待機手術の場合は、専門の先生が目標を達成した後に手術を行い、時間がなく緊急手術が必要な場合はその前後の血糖管理は厳格に専門の先生にしていただくという方法です。
周藤以前私が大学病院で有病者歯科を行っていた際は「HbA1c 8%以下でないと外科処置は禁忌」とされていましたが、基準となる数値はありますか。
兵庫高齢化とともにHbA1cの数値も年齢や状況に応じて目標値を変えていく時代になっています。HbA1cだけをターゲットにして糖尿病を診るのであれば、6.5%から糖尿病で、人間ドックなどでは5.5%までを基準値にしています。5.5~6.4%の場合は「気をつけてください」という注意喚起、6.5%を超えると「糖尿病の可能性が高いので精査を受けてきちんと診断してもらうように」、という状況になっています。さらに糖尿病治療を受けている人は、若い方で長期予後を良くしたい場合は6%未満が目標値になっています。ただ、糖尿病としての診断基準は6.5%ですが、6~6.5%のいわゆる糖尿病予備軍の方も血管合併症や臓器障害が進行することが分かっていますので注意が必要です。糖尿病と診断されなければ自己努力する人も少ないですから、放置しておくうちに病気が進行することになります。良好の状態を維持する場合は6~7%くらい、高齢で低血糖の心配がある方の場合は8%と、分かりやすく数値で糖尿病治療を考える、さらに人がそれぞれに持っている糖尿病合併症の状況や年齢、性格も加味して考えるという治療法になっていますから、一律の基準を設けるのは難しいところです。

抗生剤の投薬量やタイミングについて

[写真] 正路 晃一 先生
広島市開業
広島駅前泌尿器科クリニック
院長 正路 晃一

周藤では続いて正路先生の診療範囲について教えていただけますか。
正路私自身もともとはがんが専門で、大学病院では他に感染症、排尿障害、小児疾患を担当していましたが、市中病院では泌尿器科一般を診療してきました。歯科との関わりで言えば、ビスフォスフォネート(BP)製剤やデノスマブなどの薬剤の使用時に連携することが多いですね。
周藤実は泌尿器科について私はあまり知識がなくて…、腎臓も診療範囲に入るのでしょうか。
正路泌尿器科は、上は副腎から腎、尿管、膀胱、尿道といった尿の通り道と男性器が診療範囲です。ざっくりと男性の尿路および生殖器、女性の尿路が主な扱いとなります。そのうち腎臓は泌尿器科と腎臓内科で診療する臓器になります。消化器外科と消化器内科の関係と同じような関係でしょうか。
周藤歯科では抗生剤の予防投与を頻繁に行いますが、私を含めた歯科の先生は医科に比べて薬に関する知識が乏しいと感じています。タイミングや量についても、3日分、4日分、毎食後、就寝前など、ルーティンワークで安易に処方してしまっていると思うのですが、本来は排泄機能や代謝機能を考慮して量や種類を決めるべきですよね。例えば糖尿病のコントロールが良くない方にどうしても観血的処置が必要で、ペニシリン系の薬を処方する場合、「こういう時は減薬した方がいい」などのアドバイスがあればお願いいたします。
正路歯科では血液検査をされないことが多いとお伺いしましたが、厳密に言うとペニシリン系抗生剤もクレアチニン・クレアランスに応じて減量を行います。ただ、投与する抗生剤は様々な種類があり、個々の投与量は覚えきれないので、必要に応じてその都度インターネットで調べるようにしています。
周藤ありがとうございます。歯科の場合、現状では血液検査が難しいこともあって、「健常者で体重が○キロだから投与量はこのくらい」とアバウトに処方していることもあり、今後注意が必要と感じています。
正路しかし実臨床上は予防目的の単回や短期間投与の場合、ペニシリン系だと通常量の投薬で問題はほとんどありませんよね。
兵庫ほとんどのケースは通常量で大丈夫だと思います。患者さんご自身も悪いかどうかは分かっていますし、悪い人は抗生物質と鎮痛剤などには注意するように言われていますから…。さらにリスク回避を行うのであれば、診療後に「次回来院時に血液検査の結果を持ってきてくださいね」と受付でお伝えしてデータを共有するのが良いと思います。
周藤たしかに血液検査のデータをお持ちの方は多いですから、初診の際に「歯科でも血液データが必要」とアナウンスすることは大事ですね。

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