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“治療のために来院しない人”を増やすために歯科医師ができること~歯科から実践する鼻うがい~

熊本県山鹿市 医療法人小嶋会 おしま歯科医院 理事長・院長 山本 エレナ

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目 次

  • [写真] 熊本県山鹿市 医療法人小嶋会 おしま歯科医院 理事長・院長 山本 エレナ

    熊本県山鹿市
    医療法人小嶋会 おしま歯科医院
    理事長・院長
    山本 エレナ

「心に優しい歯科治療」をモットーに歯科治療を繰り返さないための口・身体・心のケアを提唱する山本エレナ先生に、患者さんへの寄り添い方、さらにご自身が毎日実践されている鼻うがいの有用性についてお話をうかがいました。

歯が輝けば、人生が輝く

2021年に、祖父の代から76年続くおしま歯科医院を引き継ぎました。「歯が輝けば人生が輝く, Bright teeth Bright life®」天然歯はもちろん、義歯などの補綴物も(人工歯)含めて、歯に光が当たって輝くのは笑った時。その人らしい笑顔が幸せを呼ぶという意味です。地域の皆さまの健康を支える歯科診療はもちろんのこと、歯に関心を持つきっかけとなるホワイトニングや、歯周病リスクを軽減するための矯正といった予防と美しさを目指す治療も行っています。もともと私は人を美しくしたり、人生をより良くサポートする医療職に就きたいと考えていました。歯科医院を訪れる人はお口の疾患を抱えているだけでなく、前歯が欠けた、差し歯が取れたなど、疾患以上に見た目の美しさを気にしていることも少なくありません。心を閉じて笑顔になれない方もいらっしゃいます。歯科医師はお口を通じて全身の健康と美しさを含め、その人の生き方全てに関わる尊い仕事だと感じます。

全身の健康と美しさを目指すコーチング歯科医師

患者さんが初めての歯科医院に足を踏み入れるのは、とても勇気がいります。また、治療に進めても途中で挫折しそうになるなど、治療の継続が難しいときもあります。良い治療を受けていただくために、その方の生活において「いま治療のタイミングなのか?」「なぜ治療が続けられないのか?」など、患者さんの内面に深く入っていく必要があると感じました。そこで、コーチングの手法を取り入れて診療しています。コーチングのスキルは、北海道帯広市「いのうえ歯科医院」院長で、メンタルセラピストである井上裕之先生のもとで学び、ライフコンパスメンタルコーチの資格を取得しました。患者さんが言葉にしない内なる声に耳を傾けながら、その方にとってのベストをともに目指していきます。

  • [写真] 人口3万人の温泉地にあるクリニック
    図1 人口3万人の温泉地にあるクリニック。開院当時から親子3代で通ってくださる方も。物販のみの利用も可能で、入りやすい雰囲気を心がけている。
  • [写真] ライフコンパスメンタルコーチとして、様々な角度から患者さんに向き合う
    図2 ライフコンパスメンタルコーチとして、様々な角度から患者さんに向き合う。口は患者さんの「今」を映すところ。歯科治療をきっかけに、生き方を見直す人もいる。
  • [写真] ジュエリーデンチャー
    図3 和装が趣味で休日にはよくお召しになるそう。ジュエリーデンチャー®を模した帯留めを製作し、「宝物になる入れ歯」を紹介している。

患者さんの一人の友人として長い目で寄り添っていく

はじめに患者さんと「治療に来ない人になりましょう」とお約束します。歯科医院を訪れ、勇気を出してスタートラインに立つ患者さんに「生涯、歯で悩まない状態を目指す」というゴールに向けて歯科医師が併走する。それには全ての医院スタッフはもちろん、他科の医師との連携などまわりの応援も大切。私たちの言葉遣いや態度は、他のどの職種よりも気づかいが必要です。初診時に患者さんの言葉、表情、外見をつぶさに観察し、さらに面談を通して「人と人」として信頼関係を築くことを心がけています。私たちは患者さんからも観察されているのです。面談は「お見合い」だと考えています。納得して治療に進んでいただいた後も、通院のたびに良い変化を一つでも感じてもらえるよう努めています。ゴールへの道のりでは、「今が治療の踏んばりどき」という場面で患者さんを励ましたり、背中を押すこともあります。反対に経済的、時間的、気持ち的に治療を続けることが難しいときは歯科治療がストレスにならないよう長い目で見守り続けることも大事です。

鼻うがいには鼻づまりを解消し口呼吸を改善する可能性も

[写真] 理事長・院長 山本 エレナ歯並びが悪い人のなかには、鼻づまりが原因で口呼吸になっていることも少なくありません。原因はアレルギー性鼻炎などさまざまですが、鼻の通りが悪くなると、口腔周囲筋の機能が低下し、前歯から歯並びが乱れやすくなります。とくに小さなお子さんは歯並びだけでなく、口呼吸によって酸素の取り込みが悪くなり、学力に影響することも知られています。せっかく矯正治療を行っても、口呼吸が改善されないと後戻りの原因になってしまいます。口呼吸は顔貌との関連性が高く、口元を中心とした顔立ちの美しさにも影響します。当院では矯正治療中の患者さんをはじめ、鼻づまりの症状がある人、または、お顔を拝見して口呼吸が疑われる人にも、「フロー・サイナスケア®」の鼻うがいを毎日の習慣としてお勧めしています。
矯正治療をすぐに始められない人も、鼻うがいで口呼吸を改善することにより、歯並びの悪化を少しでも緩やかにすることをお伝えしています。セルフケアができているのに歯ぐきが不健康な方、義歯が痛い方にも、口腔乾燥の可能性をお話しして、鼻うがいを勧めることも。初めての鼻うがいに不安を感じる人には、鼻うがいの説明動画を参考にしていただいたり、鼻うがいが面倒という人には「たった1分!歯磨きするより簡単ですよ」とお話しして、一度チャレンジいただくようにしています。すでに実践されている患者さんは「鼻うがい後は、スッキリする」とおっしゃいます。世界最古の伝統医学とされるインドのアーユルヴェーダでは、鼻うがいは心身の浄化と脳をクリアにする作用があるといわれており、それに関係しているのかもしれません。私も診療後の洗顔と鼻うがいを習慣にしています。フロー・サイナスケア®は、ボトルの注ぎ口が広く、毎日のお手入れのしやすさも気にいっています。診療中はマスクとフェイスシールドを装着し、口腔外バキュームを使用していますが、それでも飛散物を吸引するリスクはゼロではありません。まずは、医療従事者から鼻うがいを始めるとよいのではないでしょうか。私たちが鼻うがいの良さを知らないと患者さんに紹介できません。身近な大人が鼻うがいを実践していると、お子さんも自然に行えるようになると感じています。

口元の美しさを求める時代へ

 「8020運動」により、虫歯の罹患率は劇的に下がりました。次は「美しく清潔でいたい」という時代です。日本人の歯はもっと健康できれいになっていくと思います。とくに若い人を中心にネイルやまつ毛のエクステをするのと同じように、矯正やホワイトニングなどで見た目の美しさを求める時代になりつつあります。国による「国民皆歯科健診」の動きも追い風になり、歯科領域はこれからが楽しみです。見た目の美しさを求めることは、人として生きる証でもあります。心を満たす美しい義歯にジュエリーデンチャー®と名付け、口腔衛生向上のモチベーションに活用しています。これからも患者さんの歯、体、心に丁寧に向き合いながら歯科診療をはじめ、SNS、動画を活用し、その人自身を輝かせる情報発信にも取り組んでいきたいと思っています。

DENTAL LIFE DESIGN「MoreSmile」では山本エレナ先生による歯科衛生士さん向けの記事も掲載。
ぜひご一読ください。 ≫ 記事はこちら

  • [写真] 鼻の浄化は頭をクリアにする
    図4 鼻の浄化は頭をクリアにする。集中力を高め、心身を癒すひととき。瞑想と同じ効果があり、自分自身のコンディションを良好に保つ。
  • [写真] ご自身も毎日実践し心身をリフレッシュ
    図5 「医療従事者から鼻うがいを実践することが大事」とご自身も毎日実践し心身をリフレッシュ。
  • [写真] 野菜中心で上質なオリーブオイル使ったシンプルな調理
    図6 美と健康には食事も重要。野菜中心で上質なオリーブオイル使ったシンプルな調理を心がけている。

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