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チェアサイドで使用可能な圧力調整機能付歯科用ブラスター「アドプレップ」の特徴と開発経緯

株式会社モリタ東京製作所 技術開発部 岩崎 哲也/荒川 祐一/石森 勝也

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目 次

はじめに

近年、審美歯科への関心の高まりやCAD/CAM技術の普及、保険適用の後押しもありハイブリッドレジンやセラミックス材料の需要が高まっています。より確実な歯冠修復を実現するためには、それぞれの材料に最適な接着用レジンセメントの選定と接着面に対する表面処理が重要です。
特に接着直前にアルミナサンド(以下、アルミナ)を用いたサンドブラスト処理(以下、ブラスト処理)が有効とされており、チェアサイドで実施できることが理想とされています。
また、材料に適したブラスト圧で処理することも必要とされ1)、こうした要望を実現するためにチェアサイド圧力可変ブラスター「アドプレップ」を開発しました。
本稿では、①臨床現場の要望、②設計ポイント、③ユーザビリティ、④関連製品を示します。

① 臨床現場の要望

開発を着手するにあたり、臨床現場でおこなわれるブラスト処理の現状把握を実施しました。まず1番目の課題として、ブラスターの噴射圧は歯科用ユニットからの供給エアー圧に依存するため多くの臨床現場では制御されていないことが分かりました。一例を挙げますと、CAD/CAMレジン冠の場合、材料メーカー推奨のブラスト圧:0.1~0.2MPaに対しユニットからの供給エアー圧0.4~0.5MPaであるため、オーバーエッチングやクラックが発生する懸念があります。他の材料に関しても同様です。また2番目の課題として、ブラスト処理直後に接着をおこなわなければ接着表面の活性が低下するとされています。いずれも補綴物の脱離を防止する重要なファクターです。上記課題よりブラスター本体で容易に圧力管理ができチェアサイドで接着直前にスムーズなブラストをすることが臨床現場の接着に求められていることが推察されます。

② 設計ポイント

前述の課題は、調圧弁と圧力計の選定・搭載、ブラスターの重心バランスがポイントとなります。ブラスト圧を的確に把握するために視認性に優れ、小型で軽量な圧力ゲージを選定し、さらに各材料の推奨圧力を色分け表示することによって手元で適正に調圧することを可能としました(図1)。
また、調圧弁も極小タイプを選定し、圧力ゲージと共に後方配置としました。ここで、内部流路には軽量なアルミニウムを、前方部には重量のあるステンレス鋼を用い、重量バランスをとることで持ちやすさを改善しました(図2)。噴射性能については試行錯誤を繰り返しブラスト面の噴射範囲、噴射深さを発揮できる最適な設計に至りました。
「アドプレップ」はノズル部分に負圧発生部を内蔵し、タンクから吸引されたアルミナと調圧されたエアーを混合して噴射する吸引式を採用しました。
適切な負圧を発生させることが重要なポイントとなり、シミュレーションと実験確認を繰り返して最適なエアー管路の設計パラメータを得ました(図34)。

  • [写真] 圧力計表示
    図1 圧力計表示
  • [写真] チェアサイド圧力可変ブラスター
    図2 チェアサイド圧力可変ブラスター
  • [写真] シミュレーションソフトを用いたシミュレーション結果
    図3 シミュレーションソフトを用いたシミュレーション結果
  • [グラフ] アドプレップ 負圧データ
    図4 アドプレップ 負圧データ

③ ユーザビリティ

臨床家の意見も踏まえ、数々の試作で実験評価を積み重ね改良を加えて最終形状へと仕上げ、複数の臨床現場に投入してユーザビリティを確認したところ、従来型ブラスターと比較しても遜色無い使用感、処理効率に加え、チェアサイドで調圧がおこなえる点で大きな優位性があると評価され、試適後の清掃にも有効で時短に繋がるとの声をいただきました。

④ 関連製品

アルミナ:一般的に補綴物の内面処理には50μmアルミナが用いられていますが、図5に示しますようにメーカーや型番によって粒子径と粒度分布は様々です。10mmの距離でφ3mmの精密ブラスト処理能力を最大限に生かすため、アルミナは粒度分布が整っている(分布幅が狭い)型番Aをアドプレップ専用アルミナとして採用しています。
ブラストボックス:かつてチェアサイドでブラスターを使用していたものの、ブラスト処理時の発塵による床や服の汚れを気にして使用を中断された臨床家の話を伺いました。アルミナの飛散防止ボックスは市販されていますが、その大きさ故にチェアサイドでの使用は制約があるとのことでした。口腔外バキュームの活用も有効ですが、必ずしも常設されている機器ではございません。そこで、ストレスのないブラスト処理のために、コンパクトで軽量かつ低発塵なシステムが必要と考えました。構想段階では、片手で持ちやすい大きさをイメージして、ノズルや、補綴物を把持する指を差し込む穴をプラスチックカップに加工し(図6)、粉体流動の挙動を観察しました。粉塵制御と視認性を追求し、穴形状や内部構造を工夫してブラストボックス(図7)が生まれました。
臨床家からは「前例のない発想の面白さ、手軽で丁度良い大きさで扱い易くアドプレップにマッチしている」と好評でした。

  • [グラフ] 50μmアルミナ 粒度分布比較(型番A:アドプレップ専用アルミナ)
    図5 50μmアルミナ 粒度分布比較(型番A:アドプレップ専用アルミナ)
  • [写真] 構想試作
    図6 構想試作(身近な容器の加工品が出発点であった)
  • [写真] 製品版ブラストボックス
    図7 製品版ブラストボックス(アルコール払拭対応)

まとめ

 「アドプレップ」はチェアサイドで手軽に調圧してブラスト処理を実現できる、他に類を見なかったシステムです。
少しでも多くの方にご使用いただき、より安定した予後を実現するためのソリューションとして普及していくことを期待しています。

参考文献
  • 1) セラミックインレーにおける接着手技の実際 ~長期に安定した予後を得るための接着サイエンス~ 朝日大学 髙垣 智博、二階堂 徹

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