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Clinical Report

CAD/CAMレジン冠、脱離ゼロへ~チェアサイドでの接着前処理の勘所~

朝日大学歯学部 口腔機能修復学講座 歯科保存学分野 歯冠修復学 准教授 髙垣 智博

キーワード:CAD/CAMレジン冠の大きなトラブル/装着直前に行うサンドブラスト処理のメリット

目 次

はじめに

デジタルデンティストリーの台頭とともに、CAD/CAMの技術を用いた歯冠修復が臨床において広く普及してきている。2022年4月からは従来から冠に用いられてきたCAD/CAM用レジンブロックを用いたインレー修復も保険収載され、今後も需要は拡大していくことは疑う余地はない。また、保険外診療ではあるものの、ジルコニアセラミックスを用いた歯冠修復においても、高透光性ジルコニアや歯冠色のグラデーションを持ったマルチレイヤードのディスクの登場により、使用頻度は大きく増加してきている。
一方で、これらの材料を日常的に臨床で使用しているものの、短期間での脱離に悩まされている症例が多いとの報告もあり、正しい装着法の普及が急務である。多くの臨床家が、「接着性レジンセメント」を使用しなければならないことは認知しているものの、接着前処理も含めた細かな手順の複雑さもあり、自分の手順が果たして正しいのか自信が持てないという意見も多く聞こえてくる。
そこで、本稿では、新たに発売された「チェアサイド圧力可変ブラスター」である「アドプレップ」(図1)を用いたシンプルかつ高精度な接着前処理について紹介する。

  • [写真] チェアサイド圧力可変ブラスター「アドプレップ」
    図1 チェアサイド圧力可変ブラスター「アドプレップ」。

CAD/CAMレジン冠装着の現状

CAD/CAMレジン冠において、臨床家を悩ませる大きなトラブルは脱離である。従来の金属冠ではある程度機能した後に脱離することはあっても、装着直後や短期間での脱離の発生は少なかった。
ではCAD/CAMレジン冠は「接着しない」のかと問われれば、答えは「正しく処理できれば接着する」と言える。その際に冠の内面処理の勘所となるのが、「サンドブラスト処理(図2)」と「プライマー処理(シラン処理、図3)」の2点である。近年の報告1)を見ると、CAD/CAMレジン冠の脱離率は8%と依然高く、またその1/3以上が1週間以内での脱離であったことが報告されている。短期間での脱離は患者との信頼関係を大きく損なう結果となるため、可能な限り避けたいところである。また、同報告では脱離したCAD/CAMレジン冠の前処理においてサンドブラスト処理ならびにプライマー処理(シラン処理)がなされていたかを調査しているが、プライマー処理は初期の報告と比較して実施率の向上がみられたものの、サンドブラスト処理に関しては約6割で実施されておらず、初期の報告よりもその割合は増加したと報告している(図4)。
さらに同報告では、歯科医院におけるサンドブラスターの設置の有無も調査しており、約6割の歯科医院が「設置していない」と回答している(図5)。サンドブラストを歯科医院で行わない理由についても調査されており、半数の歯科医師が「歯科技工所でサンドブラストを実施する」と回答している。これらのデータは近年の歯科医院の状況を克明に反映しており、
・大型の圧力が調整できるサンドブラスターは高額だし、設置場所がない
・小型のサンドブラスターは便利だけど、圧力がよくわからない
という意見を多く耳にする。

  • [写真] 冠内面に対するサンドブラスト処理
    図2 冠内面に対するサンドブラスト処理。
  • [写真] 冠内面に対するシラン処理
    図3 冠内面に対するシラン処理。
  • [グラフ] 脱離クラウンにおける装着前のサンドブラスト処理とプライマー処理(シラン処理)
    図4 脱離クラウンにおける装着前のサンドブラスト処理とプライマー処理(シラン処理)。(文献1から抜粋改変)
  • [グラフ] 歯科医院におけるサンドブラスターの設置率とサンドブラスト処理を行わない理由
    図5 歯科医院におけるサンドブラスターの設置率とサンドブラスト処理を行わない理由。(文献1から抜粋改変)

CAD/CAMレジン冠の接着前処理の変化~チェアサイドブラストの重要性~

従来の手法では、CAD/CAMレジン冠の接着前の内面処理としては、
①軽圧(0.1-0.2 MPa)にてアルミナ(50μm)を用いてサンドブラスト処理
②超音波洗浄にてアルミナの残留粉末を除去する
③リン酸にてクリーニングを行う
④シラン処理を行う
と非常に煩雑なものであったが、近年の報告2、3)により超音波洗浄やサンドブラスト後のリン酸処理は不要であるとされ、より簡便な前処理へのエビデンスが明確に示されている。チェアサイドで適切な圧力に調整したサンドブラストが装着直前に実施可能であれば、その後、冠内面にエアブローを行い、シラン処理を実施するだけのシンプルかつ高精度な接着前処理が可能となる。
歯科技工所へのサンドブラスト依頼を実施することも、可能な代替案であるものの、CAD/CAMレジン冠においてはサンドブラスト後1週間大気中に保管すると、シラン処理の効果が低下するとの報告4)があり、注意が必要である(図6)。試適後の唾液や血液などのコンタミネーションの除去の観点からも、適切な圧力での装着直前のサンドブラスト処理で得られる利点は大きい。

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