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183号 WINTER 目次を見る

Clinical Report

コンポジットレジン2級修復の長期予後とリペア

DRC.Hamamatsu・田代歯科医院 田代 浩史

キーワード:2級コンポジットレジン修復/予後不良の原因と対処方法/補修修復/リピーテッド・レストレーション・サイクル

目 次

コンポジットレジン2級修復の現在

現在、臼歯部の隣接面う蝕への対応として、健全歯質への切削介入を最小限とした審美的修復方法であるコンポジットレジン2級修復は、多くの歯科医師にとってその治療方法の第一選択となっていると思う。臼歯部メタルインレー修復に対する患者の抵抗は大きく、歯科医師にとっても脱メタルの診療スタイルが浸透しつつある。CAD/CAMインレーの保険導入により、一般的には保険診療における審美的な臼歯部2級修復の選択肢は広がったと考えられるが、間接修復材料としての物性・術式・適応症に関して検討した結果、当院では現時点で施設基準の届出を行っておらず、臨床活用はしていない。また、保険外診療としてのセラミックインレー修復に関しても、直接法と比較して健全歯質削除量が多くなる窩洞形態や、破折時のリペア術式の難易度等を考慮して当院では活用される場面が限定的である。一方で、コンポジットレジン直接修復の完成度は術者の修復技術への依存度が高く、器材・材料の活用方法への正確な理解と臨床経験が必要となる。修復の規模によっては直接修復での対応が困難な場合もあるが、様々なマトリックスシステムの登場により徐々に修復操作の難易度は低下し、適応範囲が拡大されていると考える。

長期予後が気になる

コンポジットレジン直接修復の術後経過に関する問題点として、①部分的な破折、②修復材料の摩耗、③修復辺縁部の着色、④修復材料の変色等が考えられる。
現在のボンディングシステムの歯質接着強度を考えれば、コンポジットレジン修復が窩洞から脱落するというトラブルは考えにくく、もし様々な問題が発生しても部分的な補修修復等により対応可能な場合が多い1)
コンポジットレジン修復材料は、過酷な口腔内環境において長期的に歯質と一体化して機能し、象牙質を守りながら修復材料自体は徐々に摩耗や変色等の変化を受け入れる、こうした特徴を持った材料であると考える。
セラミックやメタル等の間接修復材料は修復材料自体の形態・色調は変化しにくい特徴を持つが、歯質との一体化能力に関してはコンポジットレジン直接修復に及ばない材料であり、歯冠の部分欠損に対する修復材料選択において優位性を感じていない2)
一方で、コンポジットレジンはエナメル質と比較して耐摩耗性や強度に劣る材料であり、前提として表層部等の補修修復による維持管理を一定期間で必要とするという認識を患者と共有して修復処置に適応すべきであると考える。

予後不良の原因と対処方法について

①部分的な破折:コンポジットレジン修復材料の物理的な強度の限界により発生し、補修修復による対応が必要となる。接着操作として、旧修復材料へのシランカップリング処理を行い、新たなコンポジットレジンを厚さ等の強度を確保しながら充填し形態を回復する。
②修復材料の摩耗:コンポジットレジン修復材料の耐摩耗性不足により発生し、修復部位への追加充填が必要となる。咬合接触により摩耗している場合には、周囲の咬合関係と調和した形態回復を目指し、追加充填完了後はマウスピースの装着により咬耗の進行速度低減を目指す必要がある。
③修復辺縁部の着色:窩洞辺縁部の接着強度不足により発生し、研磨や補修修復による対応が必要となる。窩洞外への過剰充填を原因とする辺縁部着色には、主に形態修正や再研磨により対応可能な場合が多い。また、重合収縮による窩洞辺縁部の接着破壊を原因とする辺縁部着色には、接着操作として旧修復材料へのシランカップリング処理を伴う補修修復や再修復により対応する。
④修復材料の変色:コンポジットレジン修復材料の経時的劣化により発生し、主に接着操作として旧修復材料へのシランカップリング処理を伴う再修復により対応する。コンポジットレジン修復材料内のマトリックスレジンが紫外線を吸収するとポリマーの分子構造の変化が生じて劣化・変色、また吸水によるマトリックスレジンとフィラーとの結合(シロキサン結合)の加水分解により光の透過性・屈折率などが変化して色調に影響を与えると考えられる。このような主に表層のコンポジットレジン修復材料の経時的な劣化は避けられないため、可能な限り象牙質を温存し旧修復材料の表層に限定した補修修復等で審美改善を目指す方法も検討する必要がある。

症例1 :経過観察症例

下顎臼歯部のメタルインレーによる審美障害を主訴に来院。
45メタルインレー修復を除去後、1級コンポジットレジン修復により審美改善を完了。6メタルインレー除去後の2級窩洞には、3Dタイプのメタルマトリックスとリングタイプリテーナー(3Dリテーナー スタンダード:ギャリソンデンタル)を活用して隔壁を設置し、2級コンポジットレジン修復を行った。また、456審美改善を完了後、₇咬合面のコンポジットレジン修復が摩耗して表層が劣化した部分にはコンポジットレジンによる再修復で対応し、術後の経過観察およびメインテナンスに移行した。3年後のメインテナンス時の口腔内写真より、最も大きな咬合力負担を受ける下顎最後臼歯の遠心頰側の機能咬頭部分でも、コンポジットレジン修復の脱落や破折はなく軽度の摩耗が認められる程度で、再修復の必要はないと判断した。
本症例の3年程度の経過を観察する限りでは、コンポジットレジン修復による健全歯質への非切削対応でも咬合機能は維持され、高強度修復材料による咬頭被覆形態での治療介入の必要性を感じることはなかった。患者は、今後も必要であればコンポジットレジンによる追加の補修修復で対処する方針を希望した。

  • [写真] 術前
    症例1-1 術前。456メタルインレー修復による審美障害が主訴。
  • [写真] 修復完了後
    症例1-2 45修復完了後、6メタルインレーを除去し、感染象牙質の範囲を確認。
  • [写真] 窩洞形成を完了してラバーダムシステムを設置
    症例1-3 6窩洞形成を完了してラバーダムシステムを設置。
  • [写真] 隔壁設置後、窩縁部エナメル質へのセレクティブエッチング処置
    症例1-4 6隔壁設置後、窩縁部エナメル質へのセレクティブエッチング処置。
  • [写真] 隣接面部分の充填後、咬合面部分を分割して積層充填
    症例1-5 6隣接面部分の充填後、咬合面部分を分割して積層充填。
  • [写真] 咬合面部分の充填操作を完了
    症例1-6 6咬合面部分の充填操作を完了。
  • [写真] コンポジットレジン修復による審美改善を完了
    症例1-7 456コンポジットレジン修復による審美改善を完了。
  • [写真] 劣化した旧コンポジットレジン修復部分を除去し、再修復を完了
    症例1-8 7劣化した旧コンポジットレジン修復部分を除去し、再修復を完了。
  • [写真] 遠心頰側咬頭部分には若干の摩耗・表面性状の劣化が認められるが、再修復の必要はない状態
    症例1-9 3年後。7遠心頰側咬頭部分には若干の摩耗・表面性状の劣化が認められるが、再修復の必要はない状態。

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