キーワード:ブラッシング指導/歯ブラシの選択の「方程式」/超薄型コンパクトヘッド歯ブラシ
人生100年、生涯にわたり歯や口の健康を守る基本としての「セルフケア」が重要性を増しています。
本稿のテーマである歯ブラシはセルフケアの中心的清掃用具ですが、果たして多くの人が自分の口にあった歯ブラシを選びきれているかというと、甚だ疑問が湧いてきます。また、その意志はあってもどれを選ぶべきか迷っている人も多いはずです。
だからこそ、ブラッシング指導を行うプロである歯科衛生士は、現在市場にでている様々な歯ブラシに関心を持つとともに、それぞれ特徴を理解し、患者さん一人ひとりにあった適切な歯ブラシ=とっておきの1本を選び、使い方を伝える必要があると思います。
本稿では、ライオン独自の技術を活かした「超薄型コンパクトヘッド+スーパーテーパード毛」の歯ブラシ「Systema AX」(ライオン歯科材)に焦点をあて、その特徴とそれを活かした使い方、指導例をご紹介します。
以下に歯ブラシを選択する際の重要事項をあげます。
① それぞれの製品の利点・欠点を知る
以下の6つの角度から各種歯ブラシの特徴を把握し、利点・欠点を自分なりに考察しておくとよいでしょう。
a. 毛先の形状は?(ラウンド、テーパード、スーパーテーパード?)
b. 硬さの種類は?
c. ヘッドの大きさは?(幅?、長さ?、厚み?)
d. ネックの長さ・細さは?
e. 毛のコシは?
f. 価格は?
② その患者さんに「あう歯ブラシ」はその時々で変化することを前提に考える
患者さんの口腔内は、ライフステージ(小児期、成人期、妊娠期、老齢期)、口腔内の治療状況や歯科疾患の進行状態によっても変化します。その時々で患者さんにあった歯ブラシを選び直すことも必要です。
例)歯周病なら
・歯周病が重度、ブラッシングで痛みが出やすい時期には「やわらかめ」
・炎症がおさまってきたら「ふつう」のかたさに変更するなど
③ 歯ブラシを選択するための「方程式」を使う
上記を考慮しつつ、患者さんの口腔の状態とブラッシング習慣を加味して選びます。
患者さんの口腔(口の大きさ、歯並び、歯周病)の状態+患者さんのブラッシング習慣の把握=適した歯ブラシを選択
ライオン歯科材(株)の「Systema AX」(図1)には、以下の特徴があります。
① 超薄型ヘッド(2.6mm)(用毛部分も含めてもコンパクトな厚み)(図2)
② ヘッドのサイズは2展開:44(M・H)、45(M)(図3)
③ スーパーテーパード毛(図4)
④ ストレートハンドル・ネック
⑤ スリム・ロングネック
⑥ ハンドルにラバーが採用されており、滑りにくい
① ヘッドが超薄型であることの利点を活かす
a. 狭い口腔、歯列不正、転位した8番、骨隆起など通常の歯ブラシが届きにくい部位にもヘッドが超薄型であるため届きやすい(図5、6)。
b. 超薄型ヘッドのため、舌側にも歯ブラシの到達性が良い(図7)。
② ヘッドのサイズを選べるという利点を活かす
「Systema AX」のサイズは前述の通り2種類あります。患者さんによってどのように磨いてほしいかやブラッシングの効率から考慮してヘッドの大きさを使い分けるとよいでしょう。
・AX 44(M・H):口腔内全体を磨く時や超薄型ヘッドが推奨されるような狭い口腔でプラークコントロールの効率を重視する際に選択。
・AX 45(M):さらに小さい超コンパクトヘッド。ヘッド幅が少し広く歯面上で安定しやすく、一歯ずつ丁寧に磨きたい方、8番や臼歯遠心などのポイント磨きに適しています。
③ スーパーテーパード毛の特徴を活かす 一般的に歯ブラシの毛先には図8に示すようなラウンド毛とスーパーテーパード毛があります。前者の例はライオン歯科材(株)の「DENT.MAXIMA」です。今回の「Systema AX」は後者です。「DENT.MAXIMA」と「Systema AX」は毛先の形状以外の超薄型ヘッドなどの特徴はほとんど同じですが、毛先の形状によってその用途は変わってきます。
図9に示すようにラウンド毛は比較的歯肉が健康な方の縁上プラークや小窩裂溝に、スーパーテーパード毛は歯周病の方の歯間部や歯周ポケット内のケア清掃にむいています。