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Case Report

前歯部審美領域インプラントにTi ハニカムメンブレンを用いてGBRを行った症例

東京都中央区 ダイヤビル歯科 院長 内藤 浩司

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キーワード:審美領域における骨造成/3次元的形態のフレームワーク

目 次

はじめに

近年、抜歯即時埋入によるリサーチの増加、ソケットシールドテクニックの開発などにより歯牙が残存している症例に関しては、より患者に対し侵襲が少なく、なおかつ審美性も高いインプラント治療が可能となってきた。
しかしながらすでに抜歯されていたり、カリエスやペリオが重篤で、残存歯牙を利用できないケースにおいては、大きな硬軟組織の増大が求められるため、患者の負担も必然と大きくなる。同時にそれは我々臨床家にとって難易度が1つも2つも高くなることを示している。
具体的には骨造成に伴う十分な減張切開や大きな結合組織の採取などが挙げられるであろう。中でも骨造成時においてフラップの裂開はその後のインプラント治療に大きな影響を及ぼすことは言うまでもない。
審美領域における骨造成においては、補綴主導型インプラント治療に基づく3次元的形態のフレームワークの再現が必要となる。
チタン強化型の非吸収性膜Ti ハニカムメンブレンは厚さわずか20μmで中央にチタンフレームが内蔵され、腹部を部分的に折り込むことで、湾曲した歯槽堤に精密に適合させることが可能となり、3次元的なオギュメンテーションにおいては非常に有利な作りになっている。そして20μmの孔が50μmの間隔で設けられているため、バクテリアの侵入を防ぎ、万が一メンブレンが露出してもその下の組織まで炎症が広がるリスクが低い。
また、この孔のおかげで軟組織の侵入を抑えることができるので、メンブレンの撤去時には容易に撤去できる利点がある。
このような特徴をもつTi ハニカムメンブレンを用いGBRを行った1症例を提示する。

症例概要

患者は67歳女性、前歯部の審美障害を主訴に来院された。30年近く前に外傷によりインプラント治療および補綴処置を行ったとのことであった。患者自身も前歯を残せないと自覚しており、インプラント治療を希望された。
また、インプラント治療においてクラウンブリッジタイプとサブストラクチャータイプのインプラント補綴があることを説明し、それぞれメリット・デメリットを述べ、患者はクラウンブリッジタイプの補綴様式を希望した。
正面観とデンタルX線を示す(図12)。両側中切歯は保存不可能と判断、診断用ワックスアップを作成した結果、同部位にインプラント埋入し、2のインプラントは低位にあるため、スリーピングさせる治療計画を立案した。
患者からの同意を得た後、両側中切歯を抜歯、プロビジョナルレストレーションを装着した。
治癒後、通法通りにインプラント埋入を行い、骨移植材を混合しTi ハニカムメンブレンをベンディング、設置した。この際、メンブレンにカドがあるとそこから裂開する可能性があるので注意が必要である。
十分に減張切開を行うが、フラップを伸展させた際歯牙が隠れるぐらいの減張量が望ましい。弾性線維を引き伸ばすよう鈍的な器具で割いていくことで十分な減張が得られる。
その後、SEI(Suspended External Internal)縫合、水平マットレス縫合を用いテンションフリーで縫合できるようフラップを寄せ、最後に単純縫合で縫合を完了した(図37)。
半年後に、骨造成後のMGJの高位付着異常の是正、かつ軟組織の増生を目的として、インターポジショナルグラフトを行った。今後は、治癒後プロビジョナルレストレーションを装着し(図812)、スカルプティングを行いながら最終補綴物へと移行予定である。

  • [写真] 初診時正面観
    図1 初診時正面観。11と21は連結されており、11には破折線が認められる。
  • [写真] 初診時デンタルX-rayおよびCT画像
    図2 初診時デンタルX-rayおよびCT画像。左図が11、右図が21。(株式会社吉田製作所社製CTにて撮影)
  • [写真] 愛護的に抜歯を行い、ソケットにはDBBMを填入、コラーゲン製剤で覆った
    図3 愛護的に抜歯を行い、ソケットにはDBBMを填入、コラーゲン製剤で覆った。
  • [写真] 抜歯後の咬合面観
    図4 抜歯後の咬合面観。
  • [写真] 同正面観
    図5 同正面観。
  • [写真] インプラント埋入時正面観
    図6 インプラント埋入時正面観。最終的な補綴物から3~4mm下方にインプラント体のプラットフォームがくるのが理想である。
  • [写真] Tiハニカムメンブレンを用いてGBRを行った
    図7 Tiハニカムメンブレンを用いてGBRを行った。湾曲した歯槽堤に適合させることが可能である(推奨されるメンブレンの設置法は表裏逆である)。
  • [写真] インプラント埋入7ヵ月後、メンブレン撤去時の咬合面観
    図8 インプラント埋入7ヵ月後、メンブレン撤去時の咬合面観。
  • [写真] メンブレンの撤去と同時に軟組織増大のため結合組織を移植した
    図9 メンブレンの撤去と同時に軟組織増大のため結合組織を移植した。
  • [写真] 軟組織移植後咬合面観
    図10 軟組織移植後咬合面観。図4と比較してみると顎堤が大きく増大している。
  • [写真] 軟組織治癒後の正面観
    図11 軟組織治癒後の正面観。この後スカルプティングを行い、プロピジョナルを煮詰めていく。
  • [写真] インプラント埋入後9ヵ月後のCT画像
    図12 インプラント埋入後9ヵ月後のCT画像を示す。左図が11、右図が21。ともに十分な骨造成が認められる。

まとめ

骨造成はインプラント治療をする上 で必要不可欠な術式であるが、術者の技量によって結果が大きく左右する。しかしながら3次元的形態の付与の観点から、Ti ハニカムメンブレンは有利なマテリアルと考える。今後も難易度の高いGBRの際には積極的に使用し、修練を重ねたい。

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