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184号 SPRING 目次を見る

Clinical Report

第3世代の機能水 微酸性次亜塩素酸水生成装置「トリージア/ポータブルトリージア」

日本口腔機能水学会 常任理事/兵庫県開業 岩本歯科 岩本 宏

キーワード:機能水/次亜塩素酸(HClO)/“withコロナ時代”の感染対策

目 次

はじめに

本稿では、微酸性次亜塩素酸水生成装置「トリージア」で生成される微酸性次亜塩素酸水について整理する。
一般財団法人機能水研究振興財団(以下、機能水財団と記載)によると、微酸性次亜塩素酸水は、陽極と陰極が隔膜で仕切られていない一室型電解装置で2~6%塩酸水あるいは塩酸と塩化ナトリウム水溶液の混合液を電解することによって生成されるpH5.0~6.5、有効塩素濃度10~80ppmの次亜塩素酸水溶液と規定されており、トリージアの生成水もこれに含まれる。
微酸性次亜塩素酸水は生成水すべてに除菌力があることが特長であり強酸性電解水と同様の抗菌・抗ウイルス活性と安全性が確認されている。また、飲用目的ではないが、塩酸を電解して得られるpH5.8~6.5の機能水は、飲用適な水質を持っている。
電解機能水の違いや、他の機能水についての詳しい説明は紙面の都合で割愛するが、知りたい方は日本口腔機能水学会または機能水財団のホームページを御覧いただきたい。書籍として『口腔機能水ガイドライン』(口腔機能水学会)や『機能水ではじめるヒトと環境に優しい歯科臨床』(砂書房)がある。
分野を問わず後発品の方が優れていることが多いが、先発の強酸性電解水に比べて微酸性次亜塩素酸水は除菌力に関わる次亜塩素酸(HClO)を安定的に多く含み、生成時や生成後の塩素ガスの発生量も少なく保存性も高くなっている(図1)。
ただし、除菌力の本体である次亜塩素酸(HClO)の濃度は使用するとともに減弱するため、個々の使用状況によって使用期間の制限(作り直し、貯め直しの時期)を設ける必要がある。コロナウイルスの爆発的な感染拡大以来、手指消毒にアルコールが多用されアルコールで拭けば安心という感覚が根付いているが、ご存じのようにノロウイルスや芽胞菌のようなアルコールが効きにくい病原体も多いため、同じ手間で大きい効果を期待したければ微酸性次亜塩素酸水を使うのが最善であると考える。
ボトル入りの次亜塩素酸水も販売されているが、物性、製法、有効期間などの表示がされていない物や、コストパフォーマンス的にも問題がある製品も見受けられる。
この度発売された「トリージア」(図2)は、生成水の有効塩素濃度の設定が35・60・80ppm(mg/L)の3段階に選択できる。特に生成が困難な有効塩素濃度80ppm(mg/L)の高濃度生成が可能なことにより、汚染の程度に関わらず幅広く対応できる。
私見であるが一般的な歯科臨床においては、そこまでの高濃度な有効塩素は必要ないと思っているが、対コロナウイルスの不活化にあたり、機能水財団の規定に合わない商品もひとまとめにしてNITE(ナイト)「独立行政法人製品評価技術基盤機構」が評価したため、80ppm(mg/L)の高濃度が必要になったとの話も聞く。
実際2020年6月の報道発表でNITEでは識者の努力もあり35ppm(mg/L)以上の濃度が必要となったが、有効塩素濃度80ppm(mg/L)が生成できる開発技術は評価に値するので、濃度ごとに使用用途を考えてみる。

  • [グラフ] 電解酸性機能水と次亜塩素酸ナトリウムにおけるHClO(次亜塩素酸)の存在率の比較
    図1 電解酸性機能水と次亜塩素酸ナトリウムにおけるHClO(次亜塩素酸)の存在率の比較(※電解微酸性機能水=微酸性次亜塩素酸水)
    pHが低下すると塩素がガス化してHClO濃度が低下する。
    pHが高くなると次亜塩素酸イオンに変化し除菌力が激減する。
    グラフ引用:『機能水ではじめるヒトと環境に優しい歯科臨床』(砂書房)
  • [写真] 微酸性次亜塩素酸水生成装置「トリージア(右)/ポータブルトリージア(左)」
    図2 微酸性次亜塩素酸水生成装置「トリージア(右)/ポータブルトリージア(左)」。

微酸性次亜塩素酸水の用途

環境の衛生管理に使用 (高濃度)

1.カウンター、ドアノブ、手すり、座席(ヘッドレストを含む)、ビニール製スリッパ
ポリエステル、レーヨンなどの化学繊維製の布巾か雑巾(天然繊維には有機物が多く含まれており塩素濃度の減弱に働く:図3)を使用して清拭し、汚れの多い場所には高濃度の微酸性次亜塩素酸水を貯め置いてその中に布巾等を浸漬して使用する(図4)。1メートル程度の拭き伸ばしでも十分効果はあるが、十分含浸させて絞ってから、折り返して新しい面で拭くようにする(図5)。
2. 床面
1.と同様の方法でモップを使用した清拭。鉄製の部品があると腐食が起こる可能性があるため、避けるようにする。
3. 洗面台、トイレ、排水口の封水(図67
金属製の配水管には不向きであるが、封水(臭気、害虫の侵入を防ぐ排水トラップのたまり水)の除菌除臭、排水管の水垢ヌメリ(雑菌のバイオフィルム)除去のために定期的に微酸性次亜塩素酸水を流す。
4. 水害で泥をかぶった箇所の洗浄後の除臭
知人の経験談である。ゲリラ豪雨等で下水の逆流によって敷地内にヘドロが残留することがある。除去して水洗いしてもドブ臭さが残ったが、最後に微酸性次亜塩素酸水で流すと臭気も一掃された。

  • [写真] 化学繊維製の布巾や雑巾を使用
    図3 化学繊維製の布巾や雑巾を使用。
  • [写真] 清拭用の布巾
    図4 清拭用の布巾。
  • [写真] 高濃度の微酸性次亜塩素酸水で清拭
    図5 高濃度の微酸性次亜塩素酸水で清拭。
  • [写真] 排水トラップの除菌除臭に微酸性次亜塩素酸水を使用する
    図6 排水トラップの除菌除臭に微酸性次亜塩素酸水を使用する。
  • [写真] 排水管に微酸性次亜塩素酸水を流す
    図7 排水管に微酸性次亜塩素酸水を流す。
歯科診療時の用途用法

1. 手洗い (低、中濃度)
歯科では未滅菌のグローブ、一回使用が通常診療であると考えれば、グローブ装着後に微酸性次亜塩素酸水で10~20秒、流水手洗いすれば十分だと考える。1患者一双であれば1処置1回の手洗いをしてもグローブの劣化は無視できる。
2. 器具洗浄 (低、中濃度)
図示した流れ(図8)に沿って各種器具の洗浄が微酸性次亜塩素酸水を用いて実施可能である(図9)。
スチール単体の器具以外は、腐食を気にせず洗浄を行っている。
3. 訪問診療 (中、高濃度)
ポータブルユニット使用後の洗浄(特に各管路内)、拭き取りに。
4. 技工物への配慮 (低、中濃度)
採得後の印象やバイトを微酸性次亜塩素酸水に浸漬(30秒以上)してから(図10)、石膏泥を注入すると硬化した模型の除菌が行える。
ただし、印象面についている血餅や食片等の汚物は事前に微酸性次亜塩素酸水の流水下で洗浄する必要がある。

  • [図] 器具類の洗浄の流れ
    図8 器具類の洗浄の流れ。
  • [写真] 器具類の洗浄
    図9 器具類の洗浄。
  • [写真] 印象の浸漬
    図10 印象の浸漬。

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