2000年の開業以来、小児の歯列矯正をはじめ、幅広い歯科治療に携わり、口腔機能に関する研究を重ねてきました。現在は、日本床矯正研究会の理事長として、歯科医師向けの勉強会や私の著書『臨床家のための床矯正治療』を通じ、口腔機能の改善につながる鼻うがいの有用性なども伝えています。
予防歯科で来院する子どもの中には、口呼吸の問題を抱えていることが珍しくありません。口呼吸には2種類あります。一つは副交感神経優位、姿勢、舌癖などで起こる無意識の口呼吸のクセ、いわゆる「お口ポカン」の状態です。この場合は、姿勢や舌の位置、口を閉じて鼻で息をすることをトレーニングすれば改善します。もう一つはウイルスやアレルギーが原因で鼻がつまり、口呼吸になっている状態です。耳鼻科で処方されている治療薬は服用している間しか効果がありません。鼻から呼吸できないと歯科治療そのものが困難です。また、矯正装置で一時的に改善できたとしても、口呼吸が治らない限り、治療後の歯列の乱れは避けられません。
そこで約5年前から、鼻づまりの子どもに対して取り入れたのが鼻うがいです。当院では、問診と簡単なチェックを行い、鼻づまりが原因で生活に支障をきたし開口癖、口呼吸がある子どもに対して鼻うがいをお勧めし、当院では『フロー・サイナスケア』を使用しています。その結果、鼻うがいを実践している子どものほとんどに、早い時点で鼻が通るなどの改善がみられ、とくに重度の鼻づまりに対しては明らかな手応えを感じています。
鼻うがいは鼻腔だけでなく、もっとも汚れが溜まりやすい上咽頭にあるアデノイド(咽頭扁桃)を洗うことが望ましいとされています。フロー・サイナスケアを使用する理由は、ボトルに圧がかけやすく、液体を一気に押し出してアデノイドに届きやすいためです。
口腔機能発達不全症の多くは、開口癖、口呼吸です。鼻づまりがひどく鼻呼吸ができない子どもたちの口腔機能を改善するには、鼻うがいが治療の第一歩だと考えています。