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CLINICAL REPORT

Erwinのより効果的な使用法 Vol.1

加藤 純二/守矢 佳世子/篠木 毅

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■目 次

■はじめに

Er:YAGレーザー “Erwin" が発売されてから、もうすぐ4年となる。その間、硬組織疾患、軟組織疾患などのいろいろな臨床例で使用され、歯科用レーザーとしては主役に躍り出た感がある。本レポートでは明日からの臨床に役立つよう、2、3の症例をあげて、“Erwin"の効果的使用法を説明したい。

■1. 歯の切削について

そもそもEr:YAGレーザーは、他のレーザーにはない特色、“レーザーで歯を削れる”という我々歯科医にとっての長年の夢をかなえるレーザーとして登場したのだが、残念ながら、臨床においてなかなか使いこなされていないのが現状である。
その大きな理由は、歯の切削効率がタービンなどの従来の方法に比べて落ちるということである。しかしながら、照射法や照射条件を工夫すれば、臨床で使用するに十分な切削効率を得ることも可能である。

症例 2歳2ヶ月 男児
上顎左側の第一乳臼歯にエナメル質から一部象牙質に達する簡蝕を認める(図1)。ラバーダムを施し、無麻酔下で簡蝕除去および窩洞形成を行った(図2)。
・ レーザー照射条件:パネル表示 150mJ/pulse (10pps)
・使用したチップ: φ0.6mm曲チップ
・照射時間:合計3分20秒
・酸エッチングは行わない
・ ボンディング:クリアフィルフォトボンド(クラレ)
・ レジン修復:APX A2(クラレ)(図3
レーザーによる歯牙切削においてもっともエネルギーを要するのはエナメル質の健 全部分である。
本症例は対象歯が乳歯であることに加えて、話窓が広く開口しており、周囲の感染エナメル質の除去は比較的容易であった。このように健全エナメル質を便宜拡大する必要の少ない調維はレーザーによる窩洞形成に適しているといえる。一般に、照射条件の目安としては、パネル表示で通常エナメル質では200~350 mj/pulse、象牙質では100~200mJ/pulse程度が適当と思われる。
エナメル質切削の場合、まず取っ掛かりを作ることがポイントである。すなわち、いきなり健全エナメル質部分の形成から始めるのではなく、上記症例のように謳窩周囲の感染エナメル質や遊離エナメル質から始めるのがよい。その場合、エアタービンこのように接触させて削りとるという感覚ではなく、エナメル質を小柱間で切り崩していくという感覚になる。したがって、チップの先端を歯質に押しつけるのではなく、こつこつと軽くたたくように動かす。
また、このときに、エナメル質表面に垂 直に当てるよりも、斜めに照射したほうがよい。調蝕部分以外においては、Er:YAGレーザーの基本性質から、水分の少ない場所すなわち石灰化のよい歯質ほど削りにくい。これは裏を返せば同じ歯牙でも石灰化の悪い部位の方が削りやすいことになる。また、当然のことながら、歯質の薄い部分のほうがより切削しやすい。エナメル質の切削工ネルギーに幅があるのはこういった理由による。
したがって、エナメル質の切削を効果的に行うためには、①切削しやすい部位から始める、②最初の出力設定は高くしてエナメル質にキズ(取っ掛かり)をつける、ということになる。ただし、いったん取っ掛かりができて、切削がエナメルから象牙質に及ぶと、同じ照射条件下ではかなり切削が進むようになるので、出力を落とし、照射方法(ハンドピースの動かし方)も、光が一点に集中しないように、つねに小刻みに動かすような注意が必要であろう。
また、レーザーによる形成面は、微少な凹凸を伴う鱗状となり(レーザーエッチング効果)、スメア層はできない(図4)。したがって、症例では酸などによる歯面処理は特別行っていない。
レーザー切削面に対する歯面処理に関して、積極的に行うか否かは賛否両論あるところだが、本症例の場合、術後約4年になるが、充填物の脱離・破折などはみられない (図5)。
このように一度こつをつかんでしまえば、Er:YAGレーザーの騒音や振動の少なさはタービンの比ではない。患者さんにとっては 非常に優しい治療となると思われる。
この点に関して、本症例おいても例外ではなく、患者は2歳になったばかりであったが号泣することもなく、レーザー使用中は体動もみられず、協力的であった。疼痛の少なさもさることながら、この年齢においてはやはり騒音や振動が少ないという点が、有利に奏功したと思われる。

先端チップの使い分け
対象歯に導光が可能であれば、直タイプのチップの方が切削効率が良い。先にも述べたが、レーザーは必ずしも歯面に対して垂直に照射する必要はない。逆にいくらか入射角度をつける方が切れ味がよい。
なお、上顎最後臼歯の遠心面など、通常の切削機器でも到達が困難な部位で、本レーザーの曲チップが思わぬ威力を発揮する。(図6)。

  • 上顎左側第一乳臼歯象牙質碼蝕の写真
    図1 上顎左側第一乳臼歯象牙質碼蝕。2歳男児。
  • 窩洞形成後の写真
    図2 窩洞形成後(150mJ/pulse 10pps)。
  • レジン充填直後の写真
    図3 レジン充填直後、化学的エッチングはおおよそ不要である。
  • 切削面SEM像
    図4 切削面SEM像。スメア層はみられない。
  • 術後3年後の写真
    図5 術後3年後。脱落・変色などみられない。
  • 曲チップ使用中の写真
    図6 曲チップ使用中。

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