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No.215 2010年4月1日発行

明日から使えるデンチャーテクニッククラリベースを用いた修理とリベース

天井久代

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明日から使えるデンチャーテクニック
クラリベースを用いた修理とリベース

医療法人社団 天志会 理事長天井 久代

はじめに

最近、クラリベースを使用する際に、“説明書通りにすると軟らかすぎて流れてしまう”、“うまくいかない”等々のご意見が多く聞かれます。そのため、あらためて『クラリベースを使用しての修理、リライニングのおさらい編』としてまとめてみました。ご参考にしていただければ幸いです。
なお、今回使用したクラリベースは「ファースト」です。

一般的名称 義歯床硬質裏装材・義歯床用接着材料
販売名 クラリベースキット
    • ■ 医療機器認証番号 220ABBZX00334000
    • ■ 医療機器の分類 管理医療機器(クラスII)
    • 製造販売 クラレメディカル株式会社
    • 東京都千代田区大手町1-1-3(大手センタービル) 〒100-0004
    • 大阪府大阪市北区梅田1-12-39(新阪急ビル) 〒530-0001

    義歯に対する考え方が変わる!!

    デンタルマガジン誌上(130号)でも書きましたが、義歯は修理、リベースが基本です。以前、訪問診療を数年間実施していた時、介護の現場のほとんどは修理とリベースでしたが、なかなかいい材料に出逢えませんでした。
    クラリベースの使用感には“目からウロコ”の驚きです。介護の必要な身体の弱った患者さんに、これは安心して使用できます。もちろん日常の臨床でもどんどん使ってみてください。数をこなした分、上手になります。

    クラリベースを使用してみて
    • 1.抗菌性(カンジダの予防)
    • 2.耐着臭性(臭いがつきにくい)
    • 3.耐着色性(汚れがつきにくい)
    • 4.操作性の良さ
    • 5.硬化熱の低さ
    • 6.刺激臭の無さ

    1. 破折

    義歯の場合の突然の来院理由のほとんどは破折です。

    • 図1破折した義歯

    • 図2ブレないように持ち、スティッキーワックスで固定

    • 図3義歯の粘膜面にワセリンを塗布

    • 図4石膏を盛り上げ、破折ラインに石膏が行き渡るように義歯を軽く押し付ける

    • 図5硬化後、義歯を外し、スティッキーワックスを除去、グルーブを入れてワセリンを塗った石膏に戻す

    • 図6即重レジンを充塡

    • 図7研磨して完成
      ☆口腔内に戻したあとの微妙な不適は次の不適の対処の仕方に従ってリライニングをしてください。

    2. 不適

    特に上顎の場合、口を開けると落ちる等の主訴が多いですが、次のようにリライニングをしてください。
    新義歯を作らずに即時に喜ばれます。

    • 図1片側にのみ印記された不適な義歯

    • 図2リライニング前に必ず機能咬頭で咬むよう、とりあえず咬合調整をする

    • 図3軽く削って新鮮面を出し、よく乾燥してから接着材を塗る

    • 図4クラリベースの計量の目安
      総義歯 2目盛/両側遊離端 1.5目盛/3~5歯 1目盛

    • 図5混和する

    • 図6タイマーを2分にセットしてゆっくりと混ぜる感覚で50秒以上経過してもサラサラ

    • 図71分40秒経過で少し抵抗を感じる

    • 図81分30秒経過から2分の間にクラリベースを盛る

    • 図92分経過後あせらず口腔内に入れて軽く筋形成

    • 図10硬化前に取り出し、余剰のクラリベースを除去し、再度口腔内に入れるか60℃のお湯につける

    • 図11研磨して完成
      ☆再度咬合調整、再度リライニングも可能

    3. 挙上―粘膜面

    義歯が装着されてはいるが、実は残存歯のみで咬んでいる場合、
    人工歯が陶歯、またはクラスプが歯頸部ライン下に沈下している場合

    • 図1人工歯が陶歯でクラスプが沈下している義歯

    • 図2粘膜面にシートワックス(1~3枚)を付与する

    • 図3シートワックスを軟化して咬ませて挙上量を確認する

    • 図4接着材を塗った後、クラリベースを2分経過後に義歯に盛り、口腔内へ
      ☆この時スタッフに次の補足用のクラリベースの用意(1目盛)をさせて混和を始めさせる

    • 図5まだ色が薄い(10~15秒経過)硬化前に取り出す

    • 図6シートワックスをエバンスで除去する

    • 図7用意していた少量のクラリベースを盛り(シートワックス分)再度口腔内へ

    • 図8完成

    4. 挙上―歯列

    人工歯の咬耗のため、残存歯との咬合平面のバランスを欠き、残存歯が突出したように見えるが、
    粘膜面の痛みを伴わない場合。部分床義歯にも適応

    • 図1低位な部位の確認をする

    • 図2咬合面をザッと削り(新鮮面を出す)練和した即重レジンを盛る

    • 図3事前にチェックしておいた部位まで軽く咬ませる(少し高めに設定する)

    • 図4余剰のレジンを除去する

    • 図5咬合調整時に盛り付けたレジンが外れない為と美観のため即重レジンを補足する

    • 図6機能咬頭で咬合するよう咬合調整をする
      改めてクラリベースでリライニングするのもよい

    5-A. 増歯、修理、リライニング 直接法 ①

    抜歯後の増歯、または即時義歯を治療経過に応じて変更して修理する場合に応用

    • 図132の抜歯

    • 図2口蓋側からユーティリティワックスを付与

    • 図3増歯する人工歯を固定

    • 図4止血とレジンの抜歯窩流入防止のため小綿球を抜歯窩に入れる

    • 図5ワセリンを多めに塗布

    • 図6図3の義歯を口腔に戻し、唇側から即重レジンで軽く固定

    • 図7レジン硬化後にユーティリティワックスを除去し

    • 図8アンダーカットを調整した後、口腔内にて空隙に即重レジンを圧接する

    • 図9完成
      ☆のちほど部分的にクラリベースにてリライニングをする方がよりベター

    5-B.増歯、修理、リライニング 直接法 2

    抜歯後の処置にアルミホイルを使用した修理とリライニングの場合

    • 図13の抜歯前

    • 図23の抜歯後

    • 図3抜歯した部位にアルミホイルを貼る

    • 図4クラスプを除去した義歯を口腔内へ戻し、ユーティリティワックスを付与する

    • 図5増歯する人工歯の試適、固定

    • 図6即重レジンを充塡する

    • 図7レジン硬化後、口腔内から取り出した義歯

    • 図8アルミホイルを除去し、咬合調整後クラリベースを盛る

    • 図92分経過後、口腔内へ入れて咬ませる

    • 図10増歯リライニング前

    • 図11増歯リライニング後

    5-C. 増歯、修理、リライニング 間接法

    部分床義歯の残存歯を抜歯後、即時に総義歯へ作り変える場合

    • 図123を増歯する前

    • 図2義歯を装着したまま印象して、印象材につけたまま義歯を口腔内より外し、義歯の内面にワセリンを塗り、石膏を盛り、硬化後、印象材をはずす

    • 図3口蓋側にグルーブを入れる

    • 図4石膏にワセリンを塗布

    • 図5義歯を石膏に戻す

    • 図6即重レジンを圧接する

    • 図7研磨して圧接、外形の完成

    • 図8義歯を口腔へ戻しユーティリティワックスを付与する

    • 図9増歯する人工歯を試適、即重レジンにて固定

    • 図10ユーティリティワックスを除去

    • 図11口腔内にてレジンを圧接

    • 図12咬合調整後、クラリベースにてリライニング

    • 図13完成

    • 図14修理、リライニング前の義歯の内面

    • 図15修理、リライニング後の義歯の内面

    おわりに

    新しい材料にはとにかく慣れることです。慣れるために少量で試してみてください。混和してみる。口に中に入れてみる。口の中で少し咬んだままにしてみる。その間、目は秒針をしっかり確認していてください(室内の温度、 その他の要因にて少々の変化あり)。だいたいの目安がついてから、実践されることをお薦めします。
    今回は、クラリベース ファーストで全てリライニングをしています。やり方に個人差はありますが、ノーマル共々試されてはいかがでしょうか。特にクラリベースの詳しい実践方法は「不適編」にまとめてありますので、再度ご確認いただければ幸いです。

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