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No.223 2013年8月1日発行

「ティースメイト®ディセンシタイザー」をプロケアに活用する

高輪歯科DCC&DSS 加藤 正治

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「ティースメイト®ディセンシタイザー」
プロケア活用する

高輪歯科DCC&DSS加藤 正治

KEYWORD根面う蝕予防/Tooth Wear進行抑制/エナメルクラック修復/ステイン沈着抑制

はじめに

「ティースメイト ディセンシタイザー」(以下TMD)はハイドロキシアパタイトを生成して象牙細管を封鎖する新しいタイプの知覚過敏抑制材料です。安全性が高く操作が容易で高度な手技を必要としないため、知覚過敏抑制目的だけでなく、プロフェッショナルケアの場面で有効活用できることも、この製品の大きな特徴となっています。
そこで今回はプロケアの一環として期待されている活用法を紹介します。

  • ●販売名 ティースメイト® ディセンシタイザー
  • ●一般的名称 歯科用知覚過敏抑制材料
  • ●医療機器認証番号 224ABBZX00014000
  • ●医療機器の分類 管理医療機器(クラスⅡ) 
  • ●製造販売 クラレノリタケデンタル(株) 新潟県胎内市倉敷町2-28

1根面う蝕予防に活用する

TMDは本来露出した象牙質表層の開口した象牙細管を封鎖することで知覚過敏抑制効果を発揮しますが、同時に、象牙細管を封鎖することはう蝕抑制においても大いにメリットがあります。
細菌のサイズ1μmに対し象牙細管開口部は直径1~3μmともいわれており、コラーゲンに富んだ象牙細管は細菌の侵入を容易にしてしまいます。そこでプロケアの仕上げとして根面う蝕リスクの高い部位にTMDを塗布して象牙細管を封鎖することで、う蝕予防効果が期待できます。

◆象牙細管の封鎖効果

図1は抜去歯を用いて作製した象牙細管開口モデルです。
この状態にTMDを塗布することで図2に示すとおり細管が封鎖される様子がわかります。また、表面の凹凸を数値化した表面粗さRa値は減少し、歯面がきめ細かく整えられていることがわかります。
象牙質は70%のハイドロキシアパタイトと20%の有機質、10%の水で構成されていますが、TMDは根面最表層のコラーゲンリッチな象牙細管をハイドロキシアパタイトで封鎖することでアパタイトリッチなエナメル質に近い状態を作り出すことができるため、根面う蝕予防にも有効と考えられます。

臨床例(図3~8)

図3~8は歯周治療後に歯根象牙質が露出し、さらに歯間部の清掃が困難になったことから根面う蝕に対する注意が必要となった症例です。十分な歯面清掃後、TMDを塗布しますが、隣接面には唾液に触れると膨潤するeフロス(製造ライオン歯科材(株) 販売(株)モリタ)を用いて擦り込むと効果的です。
仕上げにハイドロキシアパタイトの生成を促進し、耐酸性を向上させるために低濃度フッ化物ジェルでパックするとよいでしょう(次ページグラフ参照)。

象牙細管の封鎖効果

  • 図 1TMD処理前。表面粗さRa:0.238μm。
    試験条件
    • 対象歯質:人歯象牙質
    • 使用研磨紙:#1500
    • 歯面処理条件:3%EDTA30秒間
    • <TMD処理条件>
    • ラバーカップ回転数、時間:500rpm、20秒
    • ラバーカップ種類:メルサージュカップNo.14
    • TMD処理後:蒸留水で水洗
  • 図 2TMD処理後。表面粗さRa:0.190μm

  • 図 3TMD処理前。

  • 図 4マイクロブラシでTMD塗布。

  • 図 5フロスで隣接面に擦り込む。

  • 図 5フロスで隣接面に擦り込む。

  • 図 6弱圧で水洗。

  • 図 6弱圧で水洗。

  • 図 7低濃度フッ化物ジェルを併用すると効果的。

  • 図 8本症例でチェックアップジェル(ライオン歯科材(株))を10分間塗布した。

  • 酸溶解性試験 【JIS T6609-1 (2005)】(37℃で24時間浸漬、pH=2.74)ティースメイトディセンシタイザー<クラレノリタケデンタル(株) >を混和後、37℃に1時間静置後に、チェックアップジェル(950 ppm F) <ライオン歯科材(株)>を10分塗布。

臨床例(図9~13)

図9~13近心歯頸部から露出根面にかけて軟化傾向が認められ、象牙質表面にわずかな凹面が形成されて粗造化してきた症例です。知覚過敏症状は認められませんでしたが根面う蝕の進行停止を目的にTMDを応用することにしました。このようなケースでは、セルフケアでの歯面清掃が困難になり、またプロフェッショナルケアにおいても非侵襲的な歯面清掃が求められるため、象牙細管の封鎖と再石灰化促進により歯根表面の硬さを回復するようなケアを施すようにします。
術前の歯面清掃は必須ですが機械的清掃によるダメージは最小限に抑え、化学的清掃法を併用すると良いでしょう。
ここではADゲル(クラレノリタケデンタル(株))によりバイオフィルム、ペリクルなどの有機質を除去しています。ADゲルと同時にエキスカを用いれば表層の軟化象牙質を取り除くことが可能です。水洗後はダイレクトにTMDを塗布して細管封鎖効果を高めています。

  • 図 9手用ブラシによる清掃後の状態。

  • 図 10ADゲルを小筆を用いて1分程度塗布する。
    ※軟組織には付着させないように注意すること
    ※口腔外バキュームで吸引しながら行うこと

  • 図 11精製水で十分に水洗、乾燥する。

  • 図 11精製水で十分に水洗、乾燥する。

  • 図 12TMDをマイクロブラシで擦り込む。

  • 図 12TMDをマイクロブラシで擦り込む。

  • 図 13TMD処理後の状態。

2エナメル質を「歯面修復」する

TMDの対象は象牙質ばかりではなくエナメル質に対しても臨床効果が期待できます。エナメル質表面は日々のブラッシングや過度なPMTC等によってダメージを受けています。そこでプロフェッショナルケアでは、傷ついた歯面をTMDのハイドロキシアパタイトで修復する「歯面修復」を行います。
図14は抜去歯エナメル質の研磨面ですが、無数の研磨傷が観察できます。TMDを塗布すると図15に示すように表面粗さRa値は減少し研磨傷が埋め立てられて歯面が修復されていることがわかります。

歯面修復効果1(エナメル質研磨傷の修復)

  • 図 14TMD処理前。表面粗さRa:0.342μm。
    試験条件
    • 対象歯質:人歯エナメル質
    • 使用研磨紙:#1500
    • 歯面処理条件:3%EDTA30秒間
    • <TMD処理条件>
    • ラバーカップ回転数、時間:500rpm、20秒
    • ラバーカップ種類:メルサージュカップNo.14
    • TMD処理後:蒸留水で水洗
  • 図 15TMD処理後。表面粗さRa:0.203μm。
    研磨傷が埋め立てられた状態。

また、エナメル質表面にはもともと微細な凹凸や周波条が存在するため、その程度によってはステイン沈着の原因となったりバイオフィルムが付着しやすくなったりすることがあります。このようなケースでもTMDを用いて歯面修復すると表面粗さが減少して、徐々になめらかな歯面を獲得していくことが可能になります(図1617)。
さらにエナメル質には機械的刺激、温度変化等によってクラックが入ることがよくあります。エナメルクラックは象牙質まで到達すると、たとえ象牙質が露出していなくても知覚過敏症状を引き起こす場合があります。あるいはクラックにステインが入り込んでしまうこともあります。

歯面修復効果2(エナメル質未研磨面の修復)

  • 図 16TMD処理前。表面粗さRa:0.538μm。
    試験条件
    • 対象歯質:人歯エナメル質
    • 前処理条件:歯ブラシで汚れ除去
    • <TMD処理条件>
    • ラバーカップ回転数、時間:500rpm、20秒
    • ラバーカップ種類:メルサージュカップNo.14
    • TMD処理後:蒸留水で水洗
  • 図 17TMD処理後。表面粗さRa:0.392μm。
    エナメル質表面の凹凸が埋め立てられた状態。

図1819に示すようにTMDはエナメルクラックの間隙に入り込んで封鎖効果を発揮します。これにより外来刺激の遮断とステインの侵入を防止することが可能になります。ホワイトニング症例にもTMDを併用すると効果があるでしょう。

歯面修復効果3(エナメルクラックの修復)

  • 図 18TMD処理前。

  • 図 19TMD処理後。

臨床例(図20~25)

図20~25は下顎前歯部に限局してみられるステイン沈着症例です。拡大してみるとエナメル質表面の傷やもともと存在する凹凸に沿ってステインが沈着し、なおかつブラッシング時に毛先の当たりが弱いところほどステインやプラークが取り除かれずに残留している様子が観察できます。また縦走するクラックにはステインが入り込んで審美的にも好ましくない状態になっています。
このケースではエナメル質表面の荒れたコンディションをハイドロキシアパタイトで「歯面修復」することを目的にTMDを応用しました。術前の歯面清掃ではワンタフトブラシとADゲルを用いて数歯ずつステイン、バイオフィルム、ペリクルなどの有機質を除去しました。ADゲル水洗後はクラック内に入り込んだ色素も目立ちにくくなっています。
TMDはラバーカップを用いて低速回転でよく擦り込むようにします。塗布後は弱圧にて水洗します。このような歯面修復型のケアを繰り返すことでエナメル質の表面粗さが改善され、ステイン沈着の抑制効果が期待できます。セルフケアにおける日々のブラッシングで容易にステインの再付着をコントロールできる歯面の獲得をめざして行うとよいでしょう。

  • 図 20歯面清掃前。

  • 図 21ワンタフトブラシにてADゲルを数歯ずつ作用させて化学的清掃を行う。
    ※軟組織には付着させないように注意すること
    ※口腔外バキュームで吸引しながら行うこと

  • 図 22化学的清掃を行った 32はステイン、プラークが除去されている。

  • 図 22化学的清掃を行った 32はステイン、プラークが除去されている。

  • 図 23ラバーカップを用いて低速回転(500回転程度)でTMDを十分に擦り込む。

  • 図 23ラバーカップを用いて低速回転(500回転程度)でTMDを十分に擦り込む。

  • 図 24弱圧にて水洗。

  • 図 25ステインコントロールしやすい歯面を獲得。

臨床例(図26~29)

図26~29は下顎第二小臼歯頬側に発生したエナメルクラックに起因する知覚過敏症例で、歯頸部象牙質も露出していますが、歯頸部よりエナメル質クラックからの冷刺激に疼痛を訴えていたケースです。咬合ストレスの強い歯牙でエナメルクラックが認められることは珍しくありませんが、ステインが侵入して着色している比較的古いクラックよりも発生したばかりの新しいクラックが知覚過敏の原因となっていることがあります。このようなクラックは発見しにくいため、トランスイルミネーター(製造アドデント 製造販売(株)モリタ)などのLEDライトを照射することで発見しやすくなります。本症例では歯冠部中央に縦走するクラックの他、咬合による応力が集中する歯頸部側のエナメル質に無数の細かいクラックが観察できました。

TMDはマイクロブラシにてクラックに塗布し、さらにラバーカップを用いて低速回転でよく擦り込むようにします。

本症例ではTMD水洗直後に知覚過敏症状は消退しましたが耐酸性が向上して結晶安定化するまでフッ化物ジェルを10分間塗布し、さらに飲食を1時間控え咬合負担を与えないように指導しました。

  • 図 26LEDライト照射でクラックを確認。

  • 図 27マイクロブラシでTMD塗布。

  • 図 28ラバーカップにてTMDを十分に擦り込む。

  • 図 29フッ化物ジェルを10分間塗布。

  • 図 29フッ化物ジェルを10分間塗布。

3TMDはエイジングケアのマストアイテム

TMDは象牙質知覚過敏抑制材料としての臨床効果だけでなく、根面う蝕予防、Tooth Wear進行抑制、エナメルクラック修復、ステイン沈着抑制等、プロフェッショナルケアの視点からも有効利用が期待できる生体に優しくきわめて安全性の高い製品です(図30)。目に見えない変化でその効果を最大限に引き出すためには、プロケアとバランスのとれたセルフケア用品を選択することが必須です。超高齢社会を反映して加齢に伴う様々な歯牙硬組織のトラブルが増加するなか、まさにエイジングケアのマストアイテムとして利用価値の高い製品となるでしょう。

  • 図 30当院における歯のエイジングケアの主な項目。

注 : 図1、図2、図14、図15、図16、図17は高輪歯科DCC&DSSの研究データ(クラレくらしき研究センター協力)によるものです。

注意 : ADゲルは次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする歯面処理材です。
使用に当たっては、口唇、皮膚、衣類に付着しないように十分にご注意ください。

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