DMR ディー・エム・アール

No.225 2015年6月1日発行
パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリー -レジンセメント2系統3製品で高性能・高操作性を追求-
高輪歯科 加藤 正治 今村 光志(撮影協力)

パナビア V5がリードする
アドヒーシブデンティストリー-レジンセメント2系統3製品で高性能・高操作性を追求-

高輪歯科加藤 正治 今村 光志(撮影協力)

CAD/CAM時代を担うパナビア V5誕生

新しく5世代目として生まれ変わったパナビアV5は、CAD/CAMによって臨床の現場が大きく変わっていく時代の潮流に波長を合わせた魅力ある製品として誕生した。従来のパナビア F2.0とクリアフィル エステティックセメントを統合して接着性能、操作性、そして審美性の実力をすべて備えたフラッグシップにふさわしい進化といえるであろう。今回のバージョンアップにより、クラレノリタケデンタルのレジンセメントはSA系とあわせてシンプルな編成となった。これを機に、選択肢の広がるメタルフリー材料への対応をふまえてレジンセメント使いこなし術を整理しておきたい。

  • 新製品パナビア V5(クラレノリタケデンタル)

  • パナビア F2.0から飛躍的に進化したパナビア V5

  • ●販売名 パナビアV5
  • ●一般的名称 歯科用接着材料
  • ●医療機器認証番号 226ABBZX00106000
  • ●医療機器の分類 管理医療機器(クラスⅡ)
  • ●製造販売 クラレノリタケデンタル(株) 新潟県胎内市倉敷町2-28
  • ●販売:(株)モリタ

1. 2系統3製品であらゆる補綴修復に対応

図1 2系統3製品に再編されたクラレノリタケデンタルの レジンセメント

クラレノリタケデンタルのレジンセメントは大きく2系統に再編された。ひとつはセルフエッチングタイプのプライマーを併用するパナビアV5であり、もう一つはセルフアドヒーシブタイプ(前処理不要型)のSA系である。SA系はさらに、保険診療にも適したコストパフォーマンスの高いSA ルーティングプラス(ハンドミックス)と、最も接着操作が簡便なSA セメントプラス オートミックスに分けられる。これら2系統3製品を使いこなせばあらゆる補綴修復の要求にも対応できる(図1図1)。

3製品すべてには世界的に評価の高いクラレノリタケデンタル純正の高純度接着性モノマーMDPが配合されており、歯質をはじめ補綴材料との強力な接着力を発揮する。パナビアV5では新しく開発されたセルフエッチングプライマーにMDPと新規触媒を配合しており、歯質への接着においてSA系の2倍近いハイスペックな接着性能を誇っている。この点がSA系との比較においてパナビアV5の最も大きな優位性になっている。一方、SA系はMDPを新技術によりレジンペーストに高濃度に配合したことで、歯質、金属、ジルコニアにプライマーなしで安定した接着を得ることができ、術者だけでなく治療を受ける側にとってもやさしいセメンテーションが行えるように設計されている。

図1 2系統3製品に再編されたクラレノリタケデンタルの レジンセメント

2. パナビア V5の特徴と性能

筆者は臨床歴の中で初代パナビアから経験しているが、今回の5代目のバージョンアップはこれまでで最も飛躍的に進化したと感じる。パナビアF2.0のユーザーであればその違いをすぐに実感することであろう。スペックだけでなくシンプルな製品構成と操作性はテクニカルエラーが発生しにくいように考えられており、「混ぜる」、「練る」といった術者依存性の高い操作が排除されて使いやすくなった点も評価できる(図2)。

図2 パナビア V5 構成品

①1液性トゥースプライマー

これまでの2液性EDプライマーⅡにかわりワンボトル化されたトゥースプライマーが開発された。さらに今回から還元力(重合活性能)の高い重合促進剤を採用したことで、象牙質接着において従来のパナビアF2.0やクリアフィル エステティックセメントを大きく上回る接着性能を獲得したことは特筆すべき点である(図34)。
プライマー作用時間も従来の30秒から20秒へ短縮されており、プライマーの色調が淡青色のため識別性もある。

  • 図3 重合促進剤の還元力

  • 図4 人歯に対するせん断接着強さ

②オートミックスペースト

図5 当医院の症例実績に基づくシェード選択ガイド

セメントペーストはクリアフィル エステティックセメントを引き継ぐオートミックス化が図られ、気泡混入がきわめて少なく、多数歯同時セット時にも操作性が非常によい。シェードは支台歯の色調を活かしたりマスキングしたりしてコントロールすることが可能な5色をラインナップしている。ユニバーサル色を基本に、彩度をアップするブラウン、透明性をアップするクリア、明度をアップするブリーチ、遮蔽性をアップするオペークとそれぞれに対応したトライインペーストが用意されている(図5)。

ラミネートベニアのような脆性な修復物や光が到達しにくい部位でも接着補強効果がフルに発揮されるようにセメントの硬化特性が優れており、デュアルキュアでも化学重合でも高い曲げ強さが得られるようになった。余剰セメントの除去は拭き取り方式の他、光照射により半硬化状態で一塊除去できるタックキュアにも対応する。ただしトゥースプライマーが支台歯周辺歯肉に付着していると硬化促進されるので配慮を要する。なお、オペークだけは光重合に対応しないため、化学重合で最終硬化させる必要がある。

③クリアフィル セラミックプライマー プラス / K エッチャント シリンジ

図6 各種補綴物に対するせん断接着強さ

各種補綴修復材料への接着はジルコニアや二ケイ酸リチウム系ガラスを筆頭に、陶材、レジンブロック、金合金まで高いレベルの接着強さが得られている(図6)。

これまで金合金にはアロイプライマーを塗布する必要があったが、今回からセラミック材料と金属に共通で使用できるクリアフィル セラミックプライマー プラスとして提供されるようにった。パナビアF2.0からの処理上の変更点としては、ジルコニアに対してクリアフィルセラミックプライマー プラスの塗布が必須となる点に注意したい。シランカップリング処理が必要なシリカ系セラミックス等にはリン酸エッチング後にクリアフィル セラミックプライマー プラスを塗布するステップとなる。リン酸エッチング剤は、シリンジタイプになり押し出しやすく垂れない粘度に調整されているため、補綴物の処理の他、エナメル質のセレクティブエッチングにも使いやすくなった。また、口腔内での視認性に優れたブルーになっている。なお、サンドブラスト処理はいずれの補綴材料に対しても試適後に適圧で行うことは従来と同様である。

3. パナビア V5の臨床活用術

ケース1高透光性カタナジルコニアHTによる前歯補綴

上顎前歯部は、ホワイトニングに対応した明度の高い症例から彩度の高い自然な天然歯色を再現する症例まで求められる審美性はそれぞれである。パナビアV5はカタナジルコニアHTフレームとの組み合わせで天然歯との調和を引き出すことができる。支台歯歯質の色調を活かした症例では明度の高いユニバーサル色やクリア色を選択するとよい。ビスケットベイクや最終グレーズ前の試適時にトライインペーストで確認し、情報をラボと連携することでより理想的な完成へ導くことができるであろう。ジルコニアの処理はサンドブラストとMDPを作用させるためのクリアフィルセラミックプライマー プラスの塗布を必要とする。支台歯にはトゥースプライマーを塗布する。装着後は天然歯と同様な光透過性を再現することができる。

ケース1-1 カタナジルコニアHTのフレームデザイン

  • ケース1-2 硬質レジン前装ブリッジ脱離症例。支台歯形成後の上顎前歯。ともに生活歯。

  • ケース1-3 カタナジルコニアフレームHT12にて作製したPFZブリッジ。

  • ケース1-4 試適時、トライインペーストにてセット後の色調を事前にチェックする。

  • ケース1-5 色調確認後、充分に水洗する。

  • ケース1-6 サンドブラスト処理(0.3~0.4MPa)、超音波洗浄。

  • ケース1-7 セラミックプライマープラス塗布、乾燥。

  • ケース1-8 トゥースプライマー塗布20秒後、充分に乾燥。

  • ケース1-9 セメント注入。本症例ではユニバーサルを使用。

  • ケース1-10 ブリッジを圧接し、マージン全周から余剰セメントが溢れ出ることを確認。

  • ケース1-11 余剰セメント拭き取り後、光照射。

  • ケース1-12 セット後のジルコニアブリッジ。

  • ケース1-13 右上1番ジルコニアクラウン(写真右)。右上2番天然歯(写真左)と同様の光の透過性を有する。

ケース2高度な象牙質接着を要求する大臼歯レジンコア

支台築造は、接着の対象が条件の悪い劣化した象牙質であることが多い。クラウンは歯冠外側から切削により露出した象牙質が接着対象となるのに対し、支台築造では歯髄側から切削した象牙質が対象であるため、象牙細管が太く、有機質の割合が多いことと、根管治療や度重なる再補綴によりコラーゲンが変性していることも考えられる。このような予知性の低い象牙質に対してはADゲルにより変性した象牙細管内有機質を除去しレジンタグを打ち込むことで接着強さとともに耐久性、耐酸性を向上させる手法(柏田考案のADゲル法)が有効である。咬合力負担の大きい症例や二次う蝕リスクの高い大臼歯では接着操作にADゲル法を適用すると象牙質接着にさらなる信頼性を高めることができる。パナビア V5には還元力が強いトゥースプライマーが開発されており、 ADゲルユーザーにとっては大変心強い(図7)。
レジンペーストは歯質との識別性を考慮してブリーチを使用すると、支台歯形成時のガイドにもなる。ペーストは根管に直接注入して十分に満たし、気泡の混入を避けることがポイントとなる。

図7 人歯象牙質に対するせん断強さ(ADゲル法)

  • ケース2-1 根管形成終了時。歯根象牙質は変色し、脆弱化している。

  • ケース2-2 支台歯の歯面処理。ADゲル法を行う。K エッチャントシリンジ塗布、10秒後水洗、乾燥。

  • ケース2-3 ADゲル塗布、60秒後水洗、乾燥。

  • ケース2-4 作製したファイバーポスト併用レジンコアを試適調整後、サンドブラスト処理(0.1~0.2MPa)、超音波洗浄。

  • ケース2-5 K エッチャントシリンジ塗布、5秒後水洗、乾燥。

  • ケース2-6 セラミックプライマープラス塗布、エアーブローにて乾燥。

  • ケース2-7 トゥースプライマー塗布、20秒後、充分に乾燥。

  • ケース2-8 ペースト(ブリーチ)を根管内に満たす。

  • ケース2-9 気泡を巻き込まないようにレジンコアを圧接。

  • ケース2-10 余剰セメントを拭き取り後、光照射。後日5番も同様に築造。

  • ケース2-11 支台歯形成後。ブリーチ色使用で形成時の識別性良好。

  • ケース2-12 ケース1同様ジルコニアクラウン内面および支台歯を処理した後、パナビアV5ペーストを塗布。圧接後1カ所につき3~5秒光照射。

  • ケース2-13 半硬化状態で余剰セメント除去(タックキュア)。

  • ケース2-14 セット後のジルコニアジャケットクラウン。

ケース3インレー/アンレーの辺縁封鎖を高める

インレー/アンレー修復ではマージンの大半がエナメル質上に設定されることから、エナメル質との辺縁封鎖性を高める必要がある。パナビア V5ではエナメル質に対してはリン酸エッチングを行うと格段に接着強さを向上させることができる(図8)。
近年、エナメル質を選択的にエッチング処理するセレクティブエッチングが推奨されていることからも、積極的に取り入れたい技法である。
なお、ハイブリッド系や二ケイ酸リチウム系ガラスでは、シランカップリング処理としてサンドブラスト処理後のリン酸エッチングにつづきセラミックプライマープラスを塗布する。
セメントペーストは直接窩洞に注入することで気泡の混入やマージン部への流入不足を回避する。シェードは、空気や水分の介在する状態ではセット後の色調を正確に把握することが困難であるため、適合確認のあとにトライインペーストを用いて決定すると確実である。通常、修復物や歯質よりも濃い色調を選択し、彩度をアップすることでセメントラインは目立たなくなる。したがって2級窩洞、MOD、アンレーなどマージンラインが気になる症例ではブラウンを選択することが多い。

図8 牛歯象牙質に対する引張接着強さ(リン酸エッチング処理)

  • ケース3-1 窩洞形成後の咬合面観。

  • ケース3-2 適合状態の確認。その後トライインペーストを用いて使用シェードを決定。

  • ケース3-3 エステニアインレーを試適調整後、サンドブラスト処理(0.1~0.2MPa)、超音波洗浄。

  • ケース3-4 K エッチャントシリンジ塗布、5秒後水洗、乾燥。

  • ケース3-5 セラミックプライマープラス塗布、エアーブローにて乾燥。

  • ケース3-6 エナメル質にK エッチャントシリンジ塗布、10秒後水洗、乾燥。

  • ケース3-7 トゥースプライマー塗布、20秒後充分に乾燥。

  • ケース3-8 ペースト(ブラウン)を窩洞内に塗布。

  • ケース3-9 インレーを圧接後、余剰セメントを拭き取る。

  • ケース3-10 インレー全体に光照射。

  • ケース3-11 セット後のエステニアインレー。ケース3-2の適合確認時と比較してもマージンラインが目立たなくなった。

ケース4CAD/CAM冠カタナアベンシアブロックをパナビア V5で接着

小臼歯対象に保険収載されているCAD/CAM冠は、ジルコニア等に比べて脱離率が高く、接着の重要性が指摘されている。材料特性からみると、咬合力によって生じる歪みをつなぎ止めるだけの接着が求められるため、クラウンの厚みに反映する形成、適合精度の影響を受けやすい。支台の高径が低いケースや、咬合負担の大きいケース、生活歯で形成量が少ないケース、4番5番連続しているケースでは、接着性能の優れたパナビア V5を選択したい。
カタナアベンシアブロックは組成としてシリカを中心に超微粒子フィラーを高密度充填しているため、シランカップリング処理が必須となる。

  • ケース4-1 CADによるカタナアベンシアクラウンのデザイン。

  • ケース4-2 サンドブラスト処理(0.1~0.2MPa)、超音波洗浄。

  • ケース4-3 K エッチャントシリンジ5秒塗布、水洗、乾燥。

  • ケース4-4 セラミックプライマープラス塗布、エアーブローにて乾燥。

  • ケース4-5 トゥースプライマー塗布、20秒後、充分に乾燥。

  • ケース4-6 クラウン圧接後、余剰セメントを拭き取り、光照射。

  • ケース4-7 セット後の頬側面観。

  • ケース4-8 セット後の咬合面観。

4. イージー・セメンテーションを追求するSA系

セメントチョイスの基準は接着強さや機械的物性だけではない。操作性を重視したユーザーフレンドリーな一面も臨床成績に大きく影響する因子である。操作がシンプルであることはテクニカルエラーの発生が少なくなることである。SA系はタックキュアの操作性に非常に優れており、スピーディな診療が可能である。出血、浸出液のコントロール、防湿、開口制限、ポケット内余剰セメント残留の危険性など臨床の現場で100%の接着を得ることが困難である症例にセカンドチョイスとして用いることでかえっていい結果が得られることもあるであろう。チェアでの患者負担を軽減したい高齢者の補綴修復にも有効な選択となりうる。ユーザーフレンドリーであることは結果としてペイシェントフレンドリーな効果をもたらしてくれる。SA系は容易に最良な接着を得ることができる「イージーセメンテーション」を追求したレジンセメントである。

ケース5カタナアベンシアブロックをSA ルーティング プラスで接着

シランカップリング処理を施せばCAD/CAM冠の接着にも適用できる。症例に応じてパナビア V5と使い分けたい。単冠の接着であればハンドミックスタイプのSA ルーティングプラスが候補となる。

  • ケース5-1 CADによるカタナアベンシアクラウンのデザイン。

  • ケース5-2 支台歯の頬側面観。

  • ケース5-3 ケース4同様にクラウンの内面の処理を行う。

  • ケース5-4 AペーストとBペーストの等量採取後、10秒練和。

  • ケース5-5 全周から余剰セメントが出るようにクラウンを圧接。

  • ケース5-6 余剰セメント1カ所につき2~5秒光照射。

  • ケース5-7 半硬化状態で余剰セメント除去。

  • ケース5-8 再度光照射により最終硬化。

  • ケース5-9 セット後のカタナアベンシアクラウン。

ケース6カタナジルコニアをSA セメントプラス オートミックスで接着

SA系はジルコニアに対してサンドブラスト処理のみで強固な接着が得られるため、複数歯同時セットなど操作性が重視されるケースではSA セメントプラス オートミックスを選択するとよい。

  • ケース6-1 支台歯形成後の上顎前歯。オープンバイト、ウイング捻転症例。すべて生活歯で対応。

  • ケース6-2 カタナジルコニアは形成量に制約がある場合でも審美性が獲得できる。

  • ケース6-3 サンドブラスト処理(0.3~0.4MPa)、超音波洗浄。

  • ケース6-4 SA セメントプラス オートミックスをクラウン内面に塗布。

  • ケース6-5 全周から余剰セメントが出るようにクラウンを圧接。

  • ケース6-6 余剰セメント1カ所につき2~5秒光照射。

  • ケース6-7 半硬化状態で余剰セメント除去探針で装着方向(歯頸側)に向かってはがす。

  • ケース6-8 セット後のカタナジルコニアクラウン。

  • ケース6-9 主訴が改善された。

メタルフリー材料別処理一覧

*:アルミナ粒子(30~50㎛)、材料に応じて空気圧0.1~0.4MPaで適宜調整

参考文献

  • 1)補綴修復イノベーション 細菌と咬合力を重視した生物学的アプローチ 柏田聰明・加藤正治・森田誠/著 医歯薬出版
  • 2)デンタルダイヤモンド 「コンポジット系レジンセメント」徹底活用 加藤正治 デンタルダイヤモンド 35(1)2010年1月号
  • 3)レジンセメント3製品を使いこなす-クリアフィルSAルーティングの臨床的位置づけ- 加藤正治 DMR No.212
  • 4)ジルコニアセラミックス「カタナ」の特性を活かした臨床 加藤正治 デンタルマガジン2012特別号

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❶ 新しく5世代目として生まれ変わったパナビアV5は、CAD/CAMによって臨床の現場が大きく変わっていく時代の潮流に波長を合わせた魅力ある製品として誕生した。従来のパナビア F2.0とクリアフィル エステティックセメントを統合して接着性能、操作性、そして審美性の実力をすべて備えたフラッグシップにふさわしい進化といえるであろう。今回のバージョンアップにより、クラレノリタケデンタルのレジンセメントはSA系とあわせてシンプルな編成となった。これを機に、選択肢の広がるメタルフリー材料への対応をふまえてレジンセメント使いこなし術を整理しておきたい。NO.225高輪歯科加藤 正治パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリー-レジンセメント2系統3製品で高性能・高操作性を追求-今日から使える 経営情報特集 2今村 光志(撮影協力)新製品パナビア V5(クラレノリタケデンタル)パナビア F2.0から飛躍的に進化したパナビア V5CAD/CAM時代を担うパナビア V5誕生今から始めよう 歯科医院の節税対策:その7患者さんのハートをつかむアイデア:その7特集1www.●販売名 パナビアV5 ●一般的名称 歯科用接着材料 ●医療機器認証番号 226ABBZX00106000 ●医療機器の分類 管理医療機器(クラスⅡ) ●製造販売 クラレノリタケデンタル(株) 新潟県胎内市倉敷町2-28 ●販売:(株)モリタ❷図2 パナビア V5 構成品パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリー クラレノリタケデンタルのレジンセメントは大きく2系統に再編された。ひとつはセルフエッチングタイプのプライマーを併用するパナビアV5であり、もう一つはセルフアドヒーシブタイプ(前処理不要型)のSA系である。SA系はさらに、保険診療にも適したコストパフォーマンスの高いSAルーティング プラス(ハンドミックス)と、最も接着操作が簡便なSAセメントプラス オートミックスに分けられる。これら2系統3製品を使いこなせばあらゆる補綴修復の要求にも対応できる(図1)。 3製品すべてには世界的に評価の高いクラレノリタケデンタル純正の高純度接着性モノマーMDPが配合されており、歯質をはじめ補綴材料との強力な接着力を発揮する。パナビアV5では新しく開発されたセルフエッチングプライマーにMDPと新規触媒を配合しており、歯質への接着においてSA系の2倍近いハイスペックな接着性能を誇っている。この点がSA系との比較においてパナビアV5の最も大きな優位性になっている。一方、SA系はMDPを新技術によりレジンペーストに高濃度に配合したことで、歯質、金属、ジルコニアにプライマーなしで安定した接着を得ることができ、術者だけでなく治療を受ける側にとってもやさしいセメンテーションが行えるように設計されている。 筆者は臨床歴の中で初代パナビアから経験しているが、今回の5代目のバージョンアップはこれまでで最も飛躍的に進化したと感じる。パナビアF2.0のユーザーであればその違いをすぐに実感することであろう。スペックだけでなくシンプルな製品構成と操作性はテクニカルエラーが発生しにくいように考えられており、「混ぜる」、「練る」といった術者依存性の高い操作が排除されて使いやすくなった点も評価できる(図2)。①1液性トゥースプライマー これまでの2液性EDプライマーⅡにかわりワンボトル化されたトゥースプライマーが開発された。さらに今回から還元力(重合活性能)の高い重合促進剤を採用したことで、象牙質接着において従来のパナビアF2.0やクリアフィルエステティックセメントを大きく上回る接着性能を獲得したことは特筆すべき点である(図3、4)。1. 2系統3製品であらゆる補綴修復に対応2. パナビア V5の特徴と性能図1 2系統3製品に再編されたクラレノリタケデンタルの レジンセ   メント図3 重合促進剤の還元力4.543.532.521.510.50新規重合促進剤(パナビア V5 トゥースプライマーに採用)従来の重合促進剤(EDプライマーⅡに採用)NaOClに対する還元力の比較図4 人歯に対するせん断接着強さパナビアF 2.0エナメル質象牙質エナメル質象牙質エナメル質象牙質エナメル質象牙質エナメル質象牙質エステティックセメントSA セメント プラス オートミックスSAルーティングプラス37℃1日TC3000302520151050測定条件人歯#1000研磨面、被着面積3mmφマージン部へペンキュア2000で2方向から各10秒光照射試験片を37℃水中24時間浸漬後(37℃1日)、あるいはさらにサーマルサイクル負荷後(4-60℃、3000回:TC3000)測定。測定装置:オートグラフ AG-100kN(島津製作所)クロスヘッドスピード:1mm/minせん断接着強さ(MPa)❸プライマー作用時間も従来の30秒から20秒へ短縮されており、プライマーの色調が淡青色のため識別性もある。②オートミックスペースト セメントペーストはクリアフィルエステティックセメントを引き継ぐオートミックス化が図られ、気泡混入がきわめて少なく、多数歯同時セット時にも操作性が非常によい。シェードは支台歯の色調を活かしたりマスキングしたりしてコントロールすることが可能な5色をラインナップしている。ユニバーサル色を基本に、彩度をアップするブラウン、透明性をアップするクリア、明度をアップするブリーチ、遮蔽性をアップするオペークとそれぞれに対応したトライインペーストが用意されている(図5)。 ラミネートベニアのような脆性な修復物や光が到達しにくい部位でも接着補強効果がフルに発揮されるようにセメントの硬化特性が優れており、デュアルキュアでも化学重合でも高い曲げ強さが得られるようになった。余剰セメントの除去は拭き取り方式の他、光照射により半硬化状態で一塊除去できるタックキュアにも対応する。ただしトゥースプライマーが支台歯周辺歯肉に付着していると硬化促進されるので配慮を要する。なお、オペークだけは光重合に対応しないため、化学重合で最終硬化させる必要がある。③クリアフィル セラミックプライマー プラス /  K エッチャント シリンジ 各種補綴修復材料への接着はジルコニアや二ケイ酸リチウム系ガラスを筆頭に、陶材、レジンブロック、金合金まで高いレベルの接着強さが得られている(図6)。 これまで金合金にはアロイプライマーを塗布する必要があったが、今回からセラミック材料と金属に共通で使用できるクリアフィル セラミックプライマー プラスとして提供されるようになった。パナビアF2.0からの処理上の変更点としては、ジルコニアに対してクリアフィルセラミックプライマー プラスの塗布が必須となる点に注意したい。シランカップリング処理が必要なシリカ系セラミックス等にはリン酸エッチング後にクリアフィル セラミックプライマー プラスを塗布するステップとなる。リン酸エッチング剤は、シリンジタイプになり押し出しやすく垂れない粘度に調整されているため、補綴物の処理の他、エナメル質のセレクティブエッチングにも使いやすくなった。また、口腔内での視認性に優れたブルーになっている。なお、サンドブラスト処理はいずれの補綴材料に対しても試適後に適圧で行うことは従来と同様である。パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリーホワイトニング対応ベニアライトシェード対応識別性クリアブラウンアンレーダークシェード対応マスキング注)オペークは化学重合明度遮蔽性透明性彩度インレージャケットクラウンブリーチオペークレジンコア変色歯ベニア接着ブリッジユニバーサル図5 当医院の症例実績に基づくシェード選択ガイド図6 各種補綴物に対するせん断接着強さパナビアF 2.0エステティックセメントSA セメント プラス オートミックスSAルーティングプラス測定条件サンドブラスト処理(ジルコニア、金属、CAD/CAMレジン)、#1000研磨(陶材、ガラス)、被着面積5mmφマージン部へペンキュア2000で2方向から各10秒光照射試験片を37℃水中24時間浸漬し、サーマルサイクル負荷後(4-60℃、3000回:TC3000)測定。測定装置:オートグラフ AG-100kN(島津製作所)クロスヘッドスピード:1mm/min403020100せん断接着強さ(MPa)ジルコニア二ケイ酸リチウム系ガラス陶材CAD/CAMレジン金合金❹パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリーケース1 高透光性カタナジルコニアHTによる前歯補綴  上顎前歯部は、ホワイトニングに対応した明度の高い症例から彩度の高い自然な天然歯色を再現する症例まで求められる審美性はそれぞれである。パナビアV5はカタナジルコニアHTフレームとの組み合わせで天然歯との調和を引き出すことができる。支台歯歯質の色調を活かした症例では明度の高いユニバーサル色やクリア色を選択するとよい。ビスケットベイクや最終グレーズ前の試適時にトライインペーストで確認し、情報をラボと連携することでより理想的な完成へ導くことができるであろう。ジルコニアの処理はサンドブラストとMDPを作用させるためのクリアフィルセラミックプライマー プラスの塗布を必要とする。支台歯にはトゥースプライマーを塗布する。装着後は天然歯と同様な光透過性を再現することができる。3. パナビア V5の臨床活用術硬質レジン前装ブリッジ脱離症例。支台歯形成後の上顎前歯。ともに生活歯。ケース1-2色調確認後、充分に水洗する。ケース1-5トゥースプライマー塗布20秒後、充分に乾燥。ケース1-8セメント注入。本症例ではユニバーサルを使用。ケース1-9ブリッジを圧接し、マージン全周から余剰セメントが溢れ出ることを確認。ケース1-10余剰セメント拭き取り後、光照射。ケース1-11セット後のジルコニアブリッジ。ケース1-12右上1番ジルコニアクラウン(写真右)。右上2番天然歯(写真左)と同様の光の透過性を有する。ケース1-13セラミックプライマープラス塗布、乾燥。ケース1-7サンドブラスト処理(0.3~0.4MPa)、超音波洗浄。ケース1-6カタナジルコニアフレームHT12にて作製したPFZブリッジ。ケース1-3試適時、トライインペーストにてセット後の色調を事前にチェックする。ケース1-4カタナジルコニアHTのフレームデザインケース1-1(❺ケース2 高度な象牙質接着を要求する大臼歯レジンコア 支台築造は、接着の対象が条件の悪い劣化した象牙質であることが多い。クラウンは歯冠外側から切削により露出した象牙質が接着対象となるのに対し、支台築造では歯髄側から切削した象牙質が対象であるため、象牙細管が太く、有機質の割合が多いことと、根管治療や度重なる再補綴によりコラーゲンが変性していることも考えられる。このような予知性の低い象牙質に対してはADゲルにより変性した象牙細管内有機質を除去しレジンタグを打ち込むことで接着強さとともに耐久性、耐酸性を向上させる手法(柏田考案のADゲル法)が有効である。咬合力負担の大きい症例や二次う蝕リスクの高い大臼歯では接着操作にADゲル法を適用すると象牙質接着にさらなる信頼性を高めることができる。パナビア V5には還元力が強いトゥースプライマーが開発されており、 ADゲルユーザーにとっては大変心強い(図7)。 レジンペーストは歯質との識別性を考慮してブリーチを使用すると、支台歯形成時のガイドにもなる。ペーストは根管に直接注入して十分に満たし、気泡の混入を避けることがポイントとなる。パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリー図7 人歯象牙質に対するせん断強さ(ADゲル法)通常術式_37℃1日通常術式_TC3000ADゲル法_37℃1日ADゲル法_TC3000パナビア F 2.0測定条件人歯#1000研磨面、被着面積3mmφマージン部へペンキュア2000で2方向から各10秒光照射試験片を37℃水中24時間浸漬後(37℃1日)、あるいはさらにサーマルサイクル負荷後(4-60℃、3000回:TC3000)測定。測定装置:オートグラフ AG-100kN(島津製作所)クロスヘッドスピード:1mm/min302520151050せん断接着強さ作製したファイバーポスト併用レジンコアを試適調整後、サンドブラスト処理(0.1~0.2MPa)、超音波洗浄。ケース2-4Kエッチャントシリンジ塗布、5秒後水洗、乾燥。ケース2-5セラミックプライマープラス塗布、エアーブローにて乾燥。ケース2-6根管形成終了時。歯根象牙質は変色し、脆弱化している。ケース2-1支台歯の歯面処理。ADゲル法を行う。Kエッチャントシリンジ塗布、10秒後水洗、乾燥。ケース2-2ADゲル塗布、60秒後水洗、乾燥。ケース2-3トゥースプライマー塗布、20秒後、充分に乾燥。ケース2-7ペースト(ブリーチ)を根管内に満たす。ケース2-8気泡を巻き込まないようにレジンコアを圧接。ケース2-9MPa)❻パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリーケース3 インレー/アンレーの辺縁封鎖を高める  インレー/アンレー修復ではマージンの大半がエナメル質上に設定されることから、エナメル質との辺縁封鎖性を高める必要がある。パナビア V5ではエナメル質に対してはリン酸エッチングを行うと格段に接着強さを向上させることができる(図8)。 近年、エナメル質を選択的にエッチング処理するセレクティブエッチングが推奨されていることからも、積極的に取り入れたい技法である。 なお、ハイブリッド系や二ケイ酸リチウム系ガラスでは、シランカップリング処理としてサンドブラスト処理後のリン酸エッチングにつづきセラミックプライマープラスを塗布する。セメントペーストは直接窩洞に注入することで気泡の混入やマージン部への流入不足を回避する。シェードは、空気や水分の介在する状態ではセット後の色調を正確に把握することが困難であるため、適合確認のあとにトライインペーストを用いて決定すると確実である。通常、修復物や歯質よりも濃い色調を選択し、彩度をアップすることでセメントラインは目立たなくなる。したがって2級窩洞、MOD、アンレーなどマージンラインが気になる症例ではブラウンを選択することが多い。余剰セメントを拭き取り後、光照射。後日5番も同様に築造。ケース2-10支台歯形成後。ブリーチ色使用で形成時の識別性良好。ケース2-11セット後のジルコニアジャケットクラウン。ケース2-14ケース1同様ジルコニアクラウン内面および支台歯を処理した後、パナビアV5ペーストを塗布。圧接後1カ所につき3~5秒光照射。ケース2-12半硬化状態で余剰セメント除去(タックキュア)。ケース2-13図8 牛歯象牙質に対する引張接着強さ(リン酸エッチング処理)通常術式エッチング測定条件牛歯#1000研磨面、被着面積3mmφ、化学硬化試験片を37℃水中24時間浸漬後(37℃1日)、あるいはさらにサーマルサイクル負荷後(4-60℃、4000回:TC4000)測定。測定装置:オートグラフ AG-100kN(島津製作所)クロスヘッドスピード:2mm/min35302520151050引張接着強さエナメル質 37℃1日エナメル質 TC4000象牙質 37℃1日象牙質 TC4000(MPa)❼パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリー窩洞形成後の咬合面観。ケース3-1適合状態の確認。その後トライインペーストを用いて使用シェードを決定。ケース3-2エステニアインレーを試適調整後、サンドブラスト処理(0.1~0.2MPa)、超音波洗浄。ケース3-3Kエッチャントシリンジ塗布、5秒後水洗、乾燥。ケース3-4セラミックプライマープラス塗布、エアーブローにて乾燥。ケース3-5エナメル質にK エッチャントシリンジ塗布、10秒後水洗、乾燥。ケース3-6トゥースプライマー塗布、20秒後充分に乾燥。ケース3-7ペースト(ブラウン)を窩洞内に塗布。ケース3-8インレーを圧接後、余剰セメントを拭き取る。ケース3-9セット後のエステニアインレー。ケース3-2の適合確認時と比較してもマージンラインが目立たなくなった。ケース3-11インレー全体に光照射。ケース3-10❽パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリーケース4 CAD/CAM冠カタナアベンシアブロックを     パナビア V5で接着  小臼歯対象に保険収載されているCAD/CAM冠は、ジルコニア等に比べて脱離率が高く、接着の重要性が指摘されている。材料特性からみると、咬合力によって生じる歪みをつなぎ止めるだけの接着が求められるため、クラウンの厚みに反映する形成、適合精度の影響を受けやすい。支台の高径が低いケースや、咬合負担の大きいケース、生活歯で形成量が少ないケース、4番5番連続しているケースでは、接着性能の優れたパナビア V5を選択したい。 カタナアベンシアブロックは組成としてシリカを中心に超微粒子フィラーを高密度充填しているため、シランカップリング処理が必須となる。CADによるカタナアベンシアクラウンのデザイン。ケース4-1サンドブラスト処理(0.1~0.2MPa)、超音波洗浄。ケース4-2Kエッチャントシリンジ5秒塗布、水洗、乾燥。ケース4-3CADセラミックプライマープラス塗布、エアーブローにて乾燥。ケース4-4トゥースプライマー塗布、20秒後、充分に乾燥。ケース4-5セット後の頬側面観。ケース4-7セット後の咬合面観。ケース4-8クラウン圧接後、余剰セメントを拭き取り、光照射。ケース4-6❾ セメントチョイスの基準は接着強さや機械的物性だけではない。操作性を重視したユーザーフレンドリーな一面も臨床成績に大きく影響する因子である。操作がシンプルであることはテクニカルエラーの発生が少なくなることである。SA系はタックキュアの操作性に非常に優れており、スピーディな診療が可能である。出血、浸出液のコントロール、防湿、開口制限、ポケット内余剰セメント残留の危険性など臨床の現場で100%の接着を得ることが困難である症例にセカンドチョイスとして用いることでかえっていい結果が得られることもあるであろう。チェアでの患者負担を軽減したい高齢者の補綴修復にも有効な選択となりうる。ユーザーフレンドリーであることは結果としてペイシェントフレンドリーな効果をもたらしてくれる。SA系は容易に最良な接着を得ることができる「イージーセメンテーション」を追求したレジンセメントである。 ケース5 カタナアベンシアブロックを     SA ルーティング プラスで接着  シランカップリング処理を施せばCAD/CAM冠の接着にも適用できる。症例に応じてパナビア V5と使い分けたい。単冠の接着であればハンドミックスタイプのSAルーティングプラスが候補となる。パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリー4. イージー・セメンテーションを追求するSA系3CADによるカタナアベンシアクラウンのデザイン。ケース5-1支台歯の頬側面観。ケース5-2ケース4同様にクラウンの内面の処理を行う。ケース5-3AペーストとBペーストの等量採取後、10秒練和。ケース5-4全周から余剰セメントが出るようにクラウンを圧接。ケース5-5余剰セメント1カ所につき2~5秒光照射。ケース5-6半硬化状態で余剰セメント除去。ケース5-7再度光照射により最終硬化。ケース5-8セット後のカタナアベンシアクラウン。ケース5-9●10パナビア V5がリードするアドヒーシブデンティストリーケース6 カタナジルコニアを     SA セメントプラス オートミックスで接着 SA系はジルコニアに対してサンドブラスト処理のみで強固な接着が得られるため、複数歯同時セットなど操作性が重視されるケースではSA セメントプラス オートミックスを選択するとよい。1)補綴修復イノベーション 細菌と咬合力を重視した生物学的アプローチ 柏田聰明・加藤正治・森田誠/著 医歯薬出版2)デンタルダイヤモンド 「コンポジット系レジンセメント」徹底活用 加藤正治 デンタルダイヤモンド 35(1)2010年1月号3)レジンセメント3製品を使いこなす-クリアフィルSAルーティングの臨床的位置づけ- 加藤正治 DMR No.2124)ジルコニアセラミックス「カタナ」の特性を活かした臨床 加藤正治 デンタルマガジン2012特別号参考文献支台歯形成後の上顎前歯。オープンバイト、ウイング捻転症例。すべて生活歯で対応。ケース6-1カタナジルコニアは形成量に制約がある場合でも審美性が獲得できる。ケース6-2サンドブラスト処理(0.3~0.4MPa)、超音波洗浄。ケース6-3SA セメントプラス オートミックスをクラウン内面に塗布。ケース6-4全周から余剰セメントが出るようにクラウンを圧接。ケース6-5余剰セメント1カ所につき2~5秒光照射。ケース6-6セット後のカタナジルコニアクラウン。ケース6-8半硬化状態で余剰セメント除去探針で装着方向(歯頸側)に向かってはがす。ケース6-7主訴が改善された。ケース6-9メタルフリー材料別処理一覧修復材料レジンセメント①サンドブラスト*、超音波洗浄、乾燥②K エッチャント塗布5秒、水洗、乾燥③セラミックプライマープラス塗布、乾燥*:アルミナ粒子(30~50㎛)、材料に応じて空気圧0.1~0.4MPaで適宜調整●●●●-●●--●●●パナビア V5SA ルーティングプラスSA セメントプラス オートミックスシリカ系ガラスセラミックス(フィラー)金属酸化物系セラミックスジルコニア、アルミナ陶材(ポーセレン)、二ケイ酸リチウム系ガラス、CAD/CAMレジン、ハイブリッドセラミックス、レジンコアパナビア V5SA ルーティングプラスSA セメントプラス オートミックス今日から使える 経営情報患者さんのハートをつかむアイデア:その7株式会社デンタル・マーケティング 代表取締役http://www.dental-m.co.jp特 集 2アポイント表をもっと活用しよう! 私は、歯科医院の経営診断を行う際に、患者さんになって、その歯科医院の実態をチェックするようにしています。第三者の客観的視点と患者さん視点の両方が欠かせないからです。そのため、経営診断は、まず電話で診療予約を取得することからはじまります。 私が電話で確認するのは、診療前の情報提供と情報収集は的確か、笑顔で対応している声色かなど、コミュニケーションのレベルとサービス意識の現状についてです。  診療前の情報提供・収集では、再診なのか、純新患なのか、症状、保険証の必要性、紹介の有無などについて、的確に提供・収集しているかを確認していきます。≪アポイント表に新患の枠をとっておく≫ 経営診断にうかがったのは、月間レセプト件数が1,000枚を超え、1日来院患者数100人を超えている、関東地方の歯科医院でした。 早速、予約の電話を入れたところ、「○日の○時をご希望ですね。あいにく土曜日は混み合っておりまして、今ですと土曜日で予約をとれるのは3週間先になってしまいます」という具合で、3週間先まで予約がとれない状況でした。受付スタッフは、一生懸命に対応しており、落ち度はありませんが、純新患の受け入れが十分でないと、見えない多額の損失が発生することに、気づかないようでした。これは、アポイントについてのルールがないことが問題です。 同じ急患でも、再診急患と純新患では異なる対応が必要で、純新患の受入れに重点をおくべきです。再診や再初診の患者さんももちろん重要ですが、信頼関係はすでにできている可能性が高いし、何度か診療をしていますから、急に大きな治療ケースになる可能性は少なく、次の予約をある程度であれば先延ばしすることも選択肢の一つです。院長は、受付にそのことを教育する必要があります。 しかし、純新患の場合には1人の患者さんが治療ケースよっては、数百万円になる場合がありますので、受け入れないというのは経営的に大きな損失になります。これは他業界にはない、歯科業界の特徴なのです。 この医院の理事長に改善の必要性を提言すると「新患や急患を受け入れにくくなっているのはわかっていたのですが、患者数が多く、現状のアポイントを考えるとやむを得ません」ということでした。そこで、歯科医院の新患受け入れの対策として、予約表を数時間ごとにブロックして、新患を獲得するための枠をあらかじめつくるようにしました。 多くの枠をあける必要はなく、午前午後に1回ずつ30分でもよいのです。新患枠をあらかじめとっておくことで、新患を受け入れることが可能ですし、他の時間に急患が入って診療が遅れた際の時間調整枠として活用できるのです。この歯科医院では、このようにしてお待たせしない体制づくりを推進していき、1ヵ月後に月間新患数が60人から80人に増加、収益アップにも結びつきました。≪アポイント表に非生産時間も書き込む≫ アポイント関連でもう一つ実施したのが、アポイント表の効果的活用についてです。 アポイント表は、患者さんの予約時間や診療内容を記載している一覧表という認識が一般的ですが、別の視点からも活用することで、効率的オペレーションが可能になります。 アポイント表に、診療や診療補助といった患者さんに直接かかわる生産業務以外に、器具器材準備、クレンリネスや診療データなどの分析、戦略立案の時間等の非生産時間についても記載して、ワークスケジュールとして活用するのです。その場合、誰が、いつ、どこで……という5W1Hの観点が重要です。 診療は第1領域ですが、第2領域であるクレンリネスや準備、戦略立案の時間である非生産業務の時間を割り当てることが重要なのです。新患の創造、時間管理という観点でも、アポイント表の見直しをおすすめします。寳谷 光教今から始めよう 歯科医院の節税対策:その7税理士法人キャスダック 代表税理士http://www.dentalkaikei.com所得拡大促進税制を活用しよう! 今回は、見落とされがちな「所得拡大促進税制」の節税スキームを紹介いたします。 所得拡大促進税制とは、年間のスタッフの人数や給料を増やし、要件を満たした場合、個人の歯科医院なら、その増加額の10%を税額控除できるという制度です(資本金1億円以下の医療法人は税額の20%が限度)。 なお、所得拡大促進税制は「雇用促進税制」との選択適用になります。≪所得拡大促進税制3つの要件≫ 所得拡大促進税制を受けるには、3つの要件があり、要件1~2は「雇用者給与等支給額」により判定し、要件3は「平均給与等支給額」により判定します。 雇用者給与等支給額とは、所得拡大促進税制の適用を受ける事業年度(適用年度)において、スタッフに支給する給与の合計額をいいます。このスタッフには、雇用保険に加入していないパート・アルバイトも含まれますが、個人の歯科医院は奥様などの専従者、医療法人は役員が含まれません。 平均給与等支給額とは、適用年度において継続雇用者(適用年およびその前年において給与の支給を受けたスタッフ)に支給した1人当たり・1ヵ月当たりの平均単価をいいます(継続雇用者は雇用者給与等支給額と同様に、専従者と役員は含まれません)。 簡単にいうと、全体的な給与合計額と1人当たり・1ヵ月の平均給与の2つをチェックする必要があるということです。では、要件を具体的に見ていきましょう。 ★要件1★「適用年度」の雇用者給与等支給額が「基準事業年度」の雇用者給与等支給額と比較して一定割合以上、増加していること。 基準事業年度は、適用年度によって変わらず、個人の歯科医院であれば平成25年、3月決算法人であれば平成24年4月~平成25年3月となります。増加すべき割合は、平成27年の場合で3%以上です。 この要件と他の要件を満たしている場合、雇用者等支給額の増加額の10%が控除されます。たとえば、基準事業年度の支給額が1,000万円、常勤スタッフが1名増えて、適用年度の支給額が1,300万円となった場合、300万円の増加ですから、増加割合30%で要件1を満たし、他の要件も満たせば、増加額の10%である30万円が納税額から控除されます。 ★要件2★適用年度の雇用者等支給額が、前年の雇用者等支給額を上回っていること。要件1と合わせると、雇用者等支給額を基準事業年度から適用年度まで、徐々に増加させていくことが求められているといえます。 ★要件3★適用年度の平均給与等支給額が、前事業年度の平均給与等支給額を上回っていること。この要件では、1人当たり・1ヵ月の平均給与を計算して、特定のスタッフや特定の月にかたよりなく、給与が増加していることを確認します。 ただし、適用年度に新卒のスタッフを新たに採用した場合、平均給与が下がり、要件を満たさなくなることがありましたが、平成26年の改正で、判定の対象となるスタッフが、適用年度と前事業年度に給与の支給を受けた「継続雇用者」に限定されました。 要件がかなり複雑なので、先生は概要だけ理解いただき、顧問税理士さんに「うちって所得拡大促進税制受けられるの?」と、確認いただければOKです。給与の増加を検討中の先生は、是非ご参考にしてください(今回の内容は平成27年1月時点での税法にもとづいています)。山下 剛史歯科医院経営実践マニュアル&歯科医院経営選書シリーズ 好評発売中!患者さんの心と信頼をつかむコトバづかいと話し方著:山岸弘子A5判184頁定価本体2,000円(税別)モリタコード  8051873ヵ月で医院が変わる勝ち組歯科医院経営55のポイント著:寳谷光教A5判 184頁定価本体2,000円(税別)モリタコード  805210歯科医院経営実践マニュアル&経営選書人気TOP5歯科医院経営実践マニュアルの特長★“1つの仕事に1冊の本”──この本1冊で 「歯科医院の個々の仕事」が完璧にマスター できる。★実践的な内容を中心に“理論より実践”を 心がけた内容になっている。★読みやすく、わかりやすいように、1項目 2~6ページで完結する。★豊富な図表・シート・イラストで、使いや すくしている。★執筆陣は歯科医院経営に特化したコンサル タントや歯科医師・公認会計士・税理士な どで構成する。医院の数字スタッフ教育No.2No.4QDMの特長!!絶賛発売中 図解:QDMシリーズクイント・デンタル・マネジメント・図解でコンパクトでわかりやすい・全シリーズを50のヒント・法則・留意点などで解説・経営になじみのうすい先生でも読みやすく、わかりやすい著:井上裕之A5判 124頁(2色刷り)定価 本体2,000円(税別)モリタコード:805524著:稲好智子A5判 124頁(2色刷り)定価 本体2,000円(税別)モリタコード:805550著:妹尾榮聖A5判 124頁(2色刷り)定価 本体2,000円(税別)モリタコード:805578著:小山雅明A5判 120頁(写真カラー)定価 本体2,000円(税別)モリタコード:805664営業のプロが教える自費率が2倍になるプレゼン話法著:吉野真由美A5判160頁定価本体2,000円(税別)モリタコード  805402自費率UPNo.1これで万全!歯科医院の受付・事務マニュアル著:田上めぐみA5判192頁定価本体2,000円(税別)モリタコード  805267スタッフ教育No.5歯科医院にお金を残す節税の極意著:山下剛史A5判 192頁定価本体2,000円(税別)モリタコード  805564経営選書No.3【編集協力】歯科医院経営編集部PUB No. M206.2208-1-225.1506.77,600-IN-SU上記書籍のご購入は、お出入りの歯科商店までお問い合わせください。dental-plaza.comDMR No.225 2015年6月1日発行歯科学術情報紙編集・発行DMR編集室大阪本社 大阪府吹田市垂水町3-33-18 〒564-8650 T 06. 6380 2525東京本社 東京都台東区上野2-11-15 〒110-8513 T 03. 3834 6161カタログ請求・商品のお問い合わせは、お客様相談センターへ T 0800. 222 8020(フリーコール)

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