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DMR ディー・エム・アール

No.227 2016年4月1日発行
高透光性カタナジルコニアUTML/STMLが拓く審美的フルジルコニアクラウン -パナビアV5の優れた接着性とシンプルな操作性-
中澤歯科クリニック 中澤 章

高透光性カタナ®ジルコニアUTML/STMLが拓く
審美的フルジルコニアクラウン
-パナビア®V5の優れた接着性とシンプルな操作性-

中澤歯科クリニック中澤 章

KEYWORD高い透光性 / 多彩な色調表現が可能 / 優れた接着性とシンプルな操作性のレジンセメント

はじめに

デジタルデンティストリーの時代といわれる現在、歯科臨床の現場でもっとも期待されている素材のひとつがジルコニアであろう。近年では歯科用金属材料の高騰に伴い、さまざまな代替材料が模索されているが、強度や耐摩耗性などの機械的特性を兼ね備えた審美性材料は他にない。しかしながら透光性はまだまだ不十分で、より透光性の高い製品供給が期待されていた。この度クラレノリタケデンタル(株)から新しく発表されたカタナジルコニアUTML/STML(図1)は高い透光性を有し、フルジルコニアでの審美的臨床応用が可能になった。さらに高い接着性とシンプルな操作性のパナビアV5を併用することで良好な臨床結果を得ているので紹介する。

図 1カタナジルコニアマルチレイヤードディスク断面

新しいジルコニアの機械的特性と色調コンセプト

今回、積層構造を持つカタナジルコニアMLに高い透光性を持つUTMLとSTML(図2)の2つのシリーズが追加された。従来型のML/HTと使いわけをすることで、前歯部から臼歯部まで陶材追加築盛のないフルジルコニアで対応することが可能になった。最も高い透光性を有するのがUTMLシリーズであり、従来型のジルコニアに比べ1.4倍の高い透光性を有し、エナメル質に近似した透光性を示す(図3
UTMLの製品構成は、ビタ社クラシカルシェードに準じた色調構造を有したディスク(A1 ~ D4)とエナメルシェード(ENW、EA1)が用意されている。エナメルシェードは、切端から中央にかけての彩度を抑えて、その後のステインテクニックによる多彩な色調表現が容易になっている。STMLは、透光性と機械的特性のバランスのとれたシリーズである。選択の目安は、前歯がUTML、臼歯ではUTMLあるいはSTMLと考えてよいが、とくに強度を要求されるブリッジにはHT/MLが推奨されている。カタナジルコニアのクラウンは、図4に示すような厚みが確保できるよう、鋭縁のない滑らかな支台歯形成を行う。以下に臨床症例を供覧する。

図 2UTML/STMLの色調設定

図 3UTML/STMLの機械的特性(曲げ強さ)と透光性

  • UTML・STML最小厚み
  • ML・HT最小厚み

図 4ジルコニアの最小厚み

症例1カタナ®ジルコニアUTMLによる前歯部歯冠補綴

症例は41歳男性。過去の打撲のため、両側中切歯が変色し、小さな亀裂も入り、位置が本来の歯列より少し口蓋側に移動していた(症例1-1。通法の根管治療後、ファイバーコアを適応し、高透光性のUTMLを用いたフルジルコニアクラウンによる歯冠補綴とした(症例1-2、1-3。ワックスアップした模型と支台歯をダブルスキャンして、CAD/CAMによりクラウンを製作した(症例1-4、1-5
今回のフルジルコニアクラウンは、グレーズ処理面にステインを施しただけである(症例1-6、1-7。カットバックして陶材を築盛することもできるが、今回はその工程がない分、製作時間も短縮できた。出来上がったフルジルコニアクラウンは、パナビアV5にて接着した。従来のカタナジルコニアにはない高い透光性があるだけでなく、ステインによる微細表現を施すことで、審美的な仕上がりになった(症例1-8。ディスクに積層構造を持たせてあるので、透光性の向上による歯頸部付近の暗さも回避することができた。歯の位置もクラウンの形を調節することで、矯正をせずに本来の位置に戻している。審美的にも機能的にも満足できる結果となった。

補綴製作:
カスプデンタルサプライ/カナレテクニカルセンター 
山田 和伸氏

  • 1-1術前写真。

  • 1-2ファイバーコアを装着して支台歯形成。マージンはラウンドショルダーとする。

  • 1-3シェードテイキング。審美補綴にはシェードガイドを写し込んだ写真が必要。

  • 1-4、1-5ワックスアップと支台歯形成模型をダブルスキャニングしてCAD/CAMによるクラウン製作。カタナCAD/CAMシステム、3shape社製カタナスキャナーを使用。

  • 1-6陶材は築盛せず、グレーズ面にステイニングして微細表現する。

  • 1-7完成したフルジルコニアクラウン。

  • 1-8パナビアV5によるクラウン接着。臨床的に審美的な仕上がりになった。

パナビア®V5の優れた接着性とシンプルな操作性

カタナジルコニアUTML/STMLシリーズの接着には、新製品パナビアV5(図5)が推奨されている。一般的にジルコニアには透光性を向上させると機械的強度が低下するという、相反する特徴がある。そのため透光性のあるジルコニアを選択した場合には接着力の高いセメントを適用することで一体化させ、術後の脱離や破折などのトラブルを予防することができる。
リン酸エステル系モノマー(MDP)を含む従来のパナビアF2.0も定評があったが、今回バージョンアップしたV5は象牙質接着性が大幅に向上した。なんと象牙質接着が20MPa以上という強力な接着強さである(図6、7
操作性においては、歯質・支台歯に用いる2液のセルフエッチングプライマーが1液になり、補綴物の前処理に用いるクリアフィル セラミック プライマー プラスも、ジルコニアから陶材、金属、CAD/CAMレジン、ガラスセラミックに至るまで1本で済む。ペーストはオートミックスタイプになり手練和の必要がなくなった。全体としてシンプルで操作性が大幅に向上している(図8

  • 図 5接着性レジンセメント パナビアV5

  • 図 6パナビアV5トゥースプライマー。2液のEDプライマーⅡから1液のセルフエッチングプライマーになり、歯質、レジンコア、金属コアに1本で対応できるようになった。

  • 図 7歯質への接着強さ(象牙質)。

  • 図 8クリアフィル セラミック プライマー プラス。ジルコニアから陶材、金属、CAD/CAMレジン、ガラスセラミックに至るまで1本で対応。

症例2カタナ®ジルコニア UTML/STMLによる臼歯部歯冠補綴

患者は58歳女性。上顎右側5番の根管治療後の歯冠補綴、6番のインレー処置である(症例2-1、2-2。歯冠色による審美的な修復を希望したので、5番にはファイバーコアとフルジルコニアクラウン、6番には2級のジルコニアインレーを装着した。コアの接着はパナビアF2.0の2倍の根管象牙質接着となるパナビアV5である(症例2-3、2-4。ファイバーコアにはセラミック プライマー プラスを塗布し(症例2-5)、歯面には1液性のトゥースプライマー処理を施した(症例2-6。ペーストはオートミックス型であるので練和の必要がなく操作性が大幅に向上した(症例2-7。支台歯形成・印象・シェードテイキングが済み(症例2-8)、クラウンとインレーを製作する。中高年特有のアメ色の歯冠色であり、咬合力の加わる臼歯部であるので、クラウンは透光性と強度のバランスの良いSTMLを選択し製作した(症例2-9、2-10。クラウンの接着にもパナビアV5を使用する。ジルコニアクラウン内面はサンドブラスト後(症例2-11)、セラミック プライマー プラスを塗布する(症例2-12。ジルコニアなど金属酸化物系セラミックスや金属にはリン酸エッチングの必要がない。歯面・支台歯にはトゥースプライマー処理をして(症例2-13)、クラウンを装着する。ペーストは通常はユニバーサルペーストを用い、装着後光を数秒仮照射し(症例2-14)、半硬化の状態で速やかに余剰セメントを除去する。さらにマージン部を中心に本照射し、最終硬化させる。この症例も陶材築盛は行わずにステイニングのみであるが、極めて審美性の高い満足できる結果となった(症例2-15、2-16
新しい高透光性ジルコニア、カタナジルコニアUTML/STMLと高い接着強度のレジンセメント パナビアV5を組み合わせることで、審美的で強度的にも信頼性の高い歯冠修復が可能になった。省力化に伴うコストの削減はチェアサイド・ラボサイド双方に恩恵をもたらすことになるので今後の普及が期待される。

  • 2-1、2-2術前の写真。

  • 2-3根管象牙質に対するポスト引き抜き抗力

  • 2-4ファイバーコアと事前処理。サンドブラスト後、2分間の超音波洗浄、乾燥。

  • 2-5リン酸エッチング処理後、水洗・乾燥し、クリアフィル セラミック プライマー プラスを塗布・乾燥。

  • 2-6歯面にはパナビアV5トゥースプライマーを 20秒処理し、エアーブローを行う。

  • 2-7パナビアV5にてコア装着。写真はユニバーサル色。根管内にはエンド用チップにより直接填入し、2、3秒の光照射後探針にて余剰セメントを除去する。その後3分間保持し最終硬化させる。

  • 2-8通法による支台歯形成・印象・咬合採得とシェードテイキング。鋭縁のない支台歯形態で、マージンはラウンドショルダーとする。

  • 2-9完成したフルジルコニアクラウン(STML)。ステイニングのみで陶材築盛はない。

  • 2-10完成したフルジルコニアインレー(UTML)。ステイニングのみで陶材築盛はない。

  • 2-11ジルコニア内面処理。サンドブラスト後、超音波洗浄して乾燥する。

  • 2-12その後、クリアフィル セラミック プライマープラスを塗布し、エアーブローを行う。

  • 2-13ジルコニアクラウンの接着。歯面、支台歯には、パナビアV5トゥースプライマーを20秒処理し、エアーブローを行う。

  • 2-14クラウン内面にパナビアV5を塗布後、支台歯に装着し、2、3秒光照射。半硬化した余剰セメントを探針等で除去する※。その後10秒の光照射または3分間保持し最終硬化させる。
    ※オペークの場合には小筆等で除去

  • 2-15術後側方面観。十分な審美性が得られている。

  • 2-16同咬合面観。

Download (PDF, 2.15MB)

 デジタルデンティストリーの時代といわれる現在、歯科臨床の現場でもっとも期待されている素材のひとつがジルコニアであろう。近年では歯科用金属材料の高騰に伴い、さまざまな代替材料が模索されているが、強度や耐摩耗性などの機械的特性を兼ね備えた審美性材料は他にない。しかしながら透光性はまだまだ不十分で、より透光性の高い製品供給が期待されていた。この度クラレノリタケデンタル㈱から新しく発表されたカタナジルコニアUTML/STML(図1)は高い透光性を有し、フルジルコニアでの審美的臨床応用が可能になった。さらに高い接着性とシンプルな操作性のパナビアV5を併用することで良好な臨床結果を得ているので紹介する。高透光性カタナ®ジルコニアUTML/STMLが拓く審美的フルジルコニアクラウン-パナビア®V5の優れた接着性とシンプルな操作性-中澤歯科クリニック 中澤 章特別寄稿4層構造エナメル層( 35%)グラデーション層1( 15%)グラデーション層2 (15%)ボディ層( 35%)( )内%はディスクに占める各レイヤーの厚み割合(イメージ図)焼成ディスク割断面クラレノリタケデンタル㈱独自の製法により、色調ギャップの少ない滑らかなグラデーションを有します。KEYWORD 高い透光性/多彩な色調表現が可能/優れた接着性とシンプルな操作性のレジンセメントはじめに図1 カタナジルコニアマルチレイヤードディスク断面❶NO.227