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第17回(124号)

マニュアル人間からの脱皮

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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ASSISTANT ASSISTANT

マニュアル人間からの脱皮

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子

「お待たせしました。お次のお客様、こちらへどうぞ!」「いらっしゃいませ。こんにちは!」コンビニエンスストアではレジカウンターに3人目が並ぶと別のレジを開けてくれます。
“暇なときはボーっと立っているのではなく、商品の棚を整理、商品の補給をすること”“レジカウンターに3人以上並んだらすぐに次のレジを開けること”…これはあるコンビニエンスストアのマニュアルに書かれ、指導されていることです。
最近はたいていのコンビニがこのように指導しているようで、おかげで並んで待たされるイライラもなく、比較的スピーディにレジを済ませることができます。
ところが、先日、あるコンビニに入り、のど飴を買おうと思ったのですが、種類がたくさんあったので、選びたいと思いました。でも、その商品棚の真下に店員が座り込んで、商品の整理をしていました。通路が狭く、彼女によって通路がふさがれていたので、横から手を伸ばそうとしたのですが、手が届かないところもあったので、後でゆっくり選ぼうと思い、回り道をして飲み物コーナーに行きました。飲み物を選んで、再びのど飴のコーナーに戻ったのですが、先ほどの店員はまだ座り込んでいます。結局、のど飴は買わずに買い物を済ませました。
その様子は、レジカウンターから目の前に見えます。しかし、座り込んでいる店員はおろか、カウンターの店員さえも客の通行の妨げになっていること、商品をとれないでいることはまったく気に留めていませんでした。
きっと、この店のマニュアルには、“暇なときには商品を整理、補充すること”とは書かれていても、“商品を整理、補充する動作が、お客様の買い物や通行の妨げにならないように気を配ること”“もしお客様が現在補充中の商品の付近の商品を見ようとしていたら、すぐに作業を中断して、お客様を優先すること”などとは書かれていなかったのでしょう。ご本人はマニュアルに沿ってまじめに仕事をしていても、お客様に不満感を抱かせてしまうのです。これがマニュアル人間と言われてしまうゆえんなのでしょう。
なぜそうなってしまうのでしょうか。本来マニュアルというのは、スタッフ全員が一定水準以上の仕事、応対ができるように、さらにばらつきがでないようにポイントを押さえたものなのです。つまり、“最低ここだけは押さえる”ことが凝縮されているのです。そこには必ず、なぜそうするのかという理由があるのです。例えば、3名以上並んだ時には次のレジを開けるという決め事も、「2人ならすぐに終わるだろうけれど、3人目以上の方は1人終わってもまだ待たなければならないのでいらいら感じ始めるだろう。待たせると買わずに返ってしまう方も出てしまうので、次のレジを速やかに開け、対応すべきである」という理由があるはずなのです。
ここでのポイントは“お客様を待たせない”ということです。ということは、たとえ2人しか並んでいなくとも今対応しているお客様のレジでトラブルがあったり、買い物の量が多く、計算に時間がかかりそう・・という場合も、次のレジを開けるべきなのです。にもかかわらず、「だって3人並んだら開ける」と教えられたから…といって対応しない人のことをマニュアル人間というのです。
決め事には必ず、意味があり、その目的がわかっていれば、状況に応じて臨機応変な判断ができるはずです。そしてマニュアルが求めていることも、その判断だと思うのです。

マニュアルを学ぶときには、“形”だけを身に付けるのではなく、必ず“なぜそうするのか”という理由をしっかりと理解することが大切です。
最近は、病院や医院においても、受付応対のマニュアル、電話応対のマニュアルというように、患者満足度向上に向け取り組んでいるところが増えています。しかし、その一方で、マニュアル一辺倒で、臨機応変さがない対応が気になることもあります。せっかく、満足度向上に取り組んでいるのに、かえって患者様の不満を生んでいることもあるのは残念ですね。
では、どうすれば、マニュアル的な応対から脱皮できるでしょうか。一つには、先ほど書いたように、一つひとつのマニュアルの事項に対して、“なぜそうすべきなのか”という理由を考えていくことです。
もう一つの方法としては、“相手の気持ちになってみる”ということです。
今私が担当させていただいている病院のスタッフ研修でこんな宿題を出してみました。『自身がお客様としてお店やサービスを利用したときに満足を感じた経験と不満足を感じた経験を話してください』という内容です。普段自分自身が経験したことですから、発表時にも言葉に感情が入ってきます。様々なお客様の生の声がたくさん発表されました。思わず、「それは何処のお店?」「私も行かないでおこう」などと感想が聞こえたほどでした。そして満足したポイント、不満足なポイントを書き出し、そこから“何が欠けているとそうなるのか”“そうならないためにはどうすることが必要なのか”ということを話し合って頂き、さらには自分たちの職場に当てはめて振り返って頂きました。
すると、受講者から「私たちもよく、ナースステーションで大きな声で話していて師長に怒られることがあるよね」「つい忙しくて流れ作業になっていることあるよね」などと振り返り始めました。いままで注意しても聞き入れようとしなかったスタッフが自らの行動に気づき始めたのです。
普段無意識で行っていることも、対応される側になってみると見えてくることがあるはずです。たとえ雑談のようになろうとも、このようなテーマで話してみることは、とても効果的でした。一度試されてみてはいかがですか?

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