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第52回(159号)

クレーム・苦情に対する対処方法 ~日頃のコミュニケーションがものを言う~

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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クレーム・苦情に対する対処方法〜日頃のコミュニケーションがものを言う〜

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子

歯科スタッフ向けのセミナーを開催する際、セミナーに入れてほしい内容をお伺いするのですが、毎回出てくるのが「クレーム、苦情への対応の仕方」についてです。私が今担当させていただいている総合病院で、スタッフの皆さんにどんなクレーム、苦情があるかを聞いてみました。必ずと言っていい程挙がるのが、“待ち時間について”です。「予約してきているのに、いったいいつになったら診てもらえるんだ」「私のほうが先に来たのに、どうして後から来た人が先に入るの?」など、待ち時間の長さや順番についてのクレームが多いそうです。
以前こちらのコーナーで「予約の患者さんを待たせてしまう時の工夫」についてお話ししたことがあります。
予約の段階で遅れを取り戻すための調整時間をとっておく。いつも遅れてくる患者さんには少し早めの予約時間をお伝えする、などの事前の工夫や、お待ちいただいている際には、待ち時間を伝え、その後の都合に影響しないかなどの配慮をしたり、先に用事を済ませていただくことを促す。待合室から空いているチェアに誘導するなど、少しでも先に進んでいると感じさせる、など、いくつかの工夫をご紹介しました。
しかし、それでも、不満を感じている患者さんはスタッフに直接不満を訴えてくることもあるでしょう。
今回は、このように患者さんが感情的になっている場合や他の苦情も含めて、スタッフがどのような対応をすればよいのかについてお話ししたいと思います。
まず、基本は〝相手の話を十分に聞く〟ことです。苦情の中には、患者さんの勘違いだったり、こちらに落ち度がない場合もあります。しかし、患者さんには、自分の気持ちや要求を理解してほしいという気持ちがありますので、どのような状況であれ、誠実に対応してしっかりと相手の話に耳を傾けましょう。途中で口をはさんだり、反論すると、相手の感情を逆なですることになり、クレームはさらにエスカレートしてしまいます。最後まで相手の言い分を聞き、「○○ということですね」と、こちらが理解したことを自身の言葉で要約して伝えます。
そして全部の内容に共感できなくても、「確かに私が患者様の立場ならそう思いますよね」など一部だけでも共感の気持ちを表すことも忘れないでください。その上で、丁寧に詫び、適切な対処をします。もちろんこちらに落ち度がある場合・無い場合、いずれの場合であっても、患者さんに不快な思いをさせたことに違いはありません。
相手が落ち着いて冷静に話せるよう、真摯な態度と表情で話を受け止め、「嫌な思いをさせて申し訳ございませんでした」「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」というように、まずは内容に対して謝るのではなく“患者さんの気分を害したこと”に対して詫びます。そのうえで、しかるべき対処をします。
患者さんの勘違いであったり、こちらに落ち度がなかった場合でも同様です。「ご案内がわかりづらくて申し訳ございませんでした。実は〜」「こちらの説明が不十分だったのかもしれませんね。今後はわかりやすくお伝えするようにいたします。ご指摘ありがとうございました」など、患者さんに恥をかかせない気配りも大切です。

また自分でどう対応してよいか判断できない場合には、おろおろせずに「申し訳ございません。少々お待ちください」と言って、上司や先輩に代わってもらったり、「すぐにお調べして、ご連絡差し上げますので、お時間いただけますでしょうか」といって、時間を空け、事実を確認したうえで、改めて対応するとよいでしょう。上司や先輩に代わってもらう際には、患者さんの訴えている内容やどれぐらい怒っているかなど状況を伝えます。対応に当たる上司・スタッフは内容をきちんと把握した上で対応することが重要です。次の担当の方が把握しないで対応に出たことにより2次クレームを引き起こしてしまう場合もありますので注意しましょう。
このように、スタッフの初期対応が最も重要です。どう対応するかをスタッフ全員で共通認識として備えておくことが必要です。そして何よりも、日頃から挨拶だけでなく何気ない日常会話、声がけをし、患者さんとコミュニケーションをはかり親近感を持っていただいておくことで、クレームに至らないこともあります。たとえクレームを申し立てたとしても、お互いに相手のことを受け入れやすくなっているはずです。
様々なクレームや苦情の対処方法は考えておく必要はありますが、その前に普段から患者さんとの良い関係を築いておくことが何よりも大切ですね。
ちなみに私が今担当させていただいている総合病院では、待ち時間が長くなっている患者さんに状況をお伝えするなど、こまめに声掛けをしているようです。同時に患者さんの様子や待ち状況をドクターに伝えるようにしています。
何よりも素晴らしいなと思ったことは、看護師から患者さんの苦情を聞いたドクターが診察の際に、待ち時間が長くなってしまったことを詫び、日常会話から話し始めることにより、診察が終わった患者さんは何事もなかったかのように、にこにことして診察室から出てこられるそうです。ドクターから一言、「ずいぶんお待たせして申し訳ありませんでした。その後体調はいかがですか」などと言われると患者さんもすっと機嫌がよくなるようです。
クレームや苦情は待ち時間だけではありませんが、どんな場合も日頃のコミュニケーションがものを言うのではないでしょうか。

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