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第62回(169号)

コミュニケーション…“伝えるための工夫”

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター 伊藤 純子

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コミュニケーション…
“伝えるための工夫”

株式会社ロングアイランド 接遇マナーインストラクター伊藤 純子

歯科衛生士は知識や技術が優れているだけでなく、“伝え上手”でなくてはなりません。ある歯科医院では、メインテンナンス後の会計時に“口腔衛生管理”というシートを渡しています。そのシートにはチェックした結果と指導した内容が書かれています。
例えば「右上奥歯に歯周ポケットの深いところがあります。出血はありません。磨き残しは少なく清潔な状態です。どんな歯磨き剤が良いかを説明し、歯磨き剤の使用を少なくするように説明しました。デンタルフロスの使用方法について説明しました...」といった感じです。患者さんは、あとで読み返すことで聞き流してしまったことなどを再認識できます。
特に高齢者や子どもさんのメインテナンスを行った際、ご家族の方にも伝えることができるので便利なツールだと思います。
以前私が通っていた歯科医院では、このようなシートはなかったので、時間が経つにつれ、前回どのようなことをしたのか、何をアドバイスされたのか記憶が薄れてしまいました。チェックの結果を目で見て再確認できるシートがあったら、もう少し意識して日頃のケアをするでしょうし、さらに次のメインテナンス時にその成果を実感することもできると思います。口頭で伝えるだけでなく、『文字で伝えること』はメインテナンスの効果を上げることにつながるのではないでしょうか。さらに歯科衛生士の方にとってもメリットがあると思います。例えば、新人の歯科衛生士の方など、なかなかうまく説明できなかった場合や伝え漏れたことも、追加してお伝えすることができます。
私は研修講師として指導した際に、同様のシートを作成することがあります。
私はこれをフィードバックシートと呼んでいるのですが、研修後、研修内で伝えたことや受講者各人に改善に向けて取り組んでいただきたいことを記入し、お渡ししています。学んだことやアドバイスしたことは、時間が経つにつれ、忘れてしまうので、受講された方があとで読み返すことで、自身の良い点や改善点を再認識し、意識して改善に取り組んでくれることを期待しています。
このようなシートは、教育、医療関係だけでなく、車の点検、保育所や介護施設においての家族への報告など、様々な場で使われています。口頭での説明に加えてこのようなシートを後で読むことにより、顧客は注意点を明確にできたり、安心感を持つことができますし、読むことで疑問点が解消されたり、新たな要望が出てくることもあります。歯科においても同様の効果が期待できます。
先ほどの歯科医院で患者さんにお渡しするシートには、

  • 〇歯・歯肉・口腔機能の状態・検査結果...歯垢や歯石の付着や炎症などの有無
  • 〇今後の治療方針...次回の治療内容
  • 〇上の歯と下の歯の図...どの歯に磨き残しや歯石があったのか
  • 〇指導内容...今回指導した内容、今後意識してケアしてほしいこと

などの項目があります。それぞれの項目に応じてチェック欄や文章で書く欄があり、メインテナンス終了後に記載し、会計時に患者さんに渡します。

しかし、せっかく作成したシートも患者さんに読んでもらえなければ、無駄になってしまうので、より効果的な工夫をお伝えしましょう。記入する際には患者さんに伝えるつもりで書いてください。専門用語は使わず、わかりやすい言葉を使ってください。小さな子どもや高齢の方など付き添いの方がいらっしゃった場合には、「〜してあげてください」というように言葉を変えるとよいでしょう。
また指導してもなかなか改善が見られない場合には、同じことを書くのではなく、より具体的にポイントを絞ってお伝えするとよいでしょう。例えば「全体の歯間はデンタルフロスで磨いてください。右の奥歯2本のサイドは隙間が広いので、歯間ブラシを使うとよいでしょう」という具合です。
「忙しいのに、一人ひとり書いている暇はない」と思うかもしれませんが、記録は必要ですので、そのシートが院内の記録、お渡しするメインテナンス結果として共用できればよいですね。これもインフォームドコンセント(説明、合意)の一環かと思います。
もちろんその都度の記入となると歯科衛生士の方には負担となるでしょう。指導内容はいくつかのパターンに決まってくると思いますので、それらをパソコンの定型文として登録しておき、その中から当てはまる文章を選び入力すると便利です。特記すべきことがあれば、その点だけを追加入力すればよいのです。
また文字の大きさと色は、他のチェック項目などの文章とはあえて変えることで、見逃されることが少なくなり、読みやすくなります。そして会計時に領収書と一緒にお渡しする際、受付の方が一言付け加えることが大切です。「こちらは今日、お口の中を拝見した結果です。アドバイスさせていただいた内容も書いてありますので、お読みください。では次回〇月○日頃ご来院ください」というように伝えることが重要です。
“伝え上手”になるためには説明の仕方、話し方を練習することも大切ですが、このようなシートを利用することも患者とのコミュニケーションの手段です。検討してみてはいかがでしょうか。

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