皆さんは自分の職場に満足していますか？　皆さんの職場の雰囲気はよいですか？
私が行っているリーダー向けセミナーで、“困っていること”を聞いているのですが、共通して出されることは、せっかく採用したスタッフがすぐに辞めてしまうということです。仕事の内容を教え、現場に付かせ、しばらくすると突然、「辞めたい」と言い出す。しかし、本当に“突然のこと”なのでしょうか。
ある調査によると、歯科衛生士の学校を出て、就職し、3ヵ月以内に辞めてしまう方が全国で25％、つまり4人に1人いるそうです。辞めてしまった理由を調べてみると、以下のような理由がありました。
・「仕事を覚えたいとは思うけど、先輩も忙しそうでなかなか質問ができない」「覚えることが多くて大変。スムーズにできないとドクターから仕事が遅いと怒鳴られる」「みんなのしていることを見ていて、同じようにしたのに『違う！』と怒られた」「毎日注意されてばかりで、この仕事は向いていないのではないかと自信がなくなってきた」「先輩たちは仲が良いみたいだけど、入りづらい雰囲気。挨拶しても無視された」などが挙げられています。
このような体験や思いは歯科医院に限ったことではありませんが、最近ではパワーハラスメントになりかねないということで、改善の努力をしている企業も増えてきています。しかし、そんな思いをさせているとは気づいていない場合がほとんどのようです。
歯科の仕事がしたくて勉強し、就職したにもかかわらず、辞める時の理由が、人間関係であることはとても残念なことですね。新人は環境にも慣れていない中、仕事を覚えることで精いっぱいで、不安を抱えています。メンタル面のケアをしないままでいると、相談もできずに一人で悩んだ挙句、ある日「辞めます」と言ってくるのです。決して“突然に”ではないと思います。ひとえにコミュニケーション不足が原因かと思われます。
仲間として積極的に招き入れる、まめに声を掛けたり、話を聴いてあげるなど、意識してコミュニケーションをとることが必要です。困っていることや不安に感じていることがないか聞いてあげてください。共感し、受け止めてあげるだけでも、不安や悩みは少しでも解消されるでしょうし、対処も早くできるはずです。
新人はできることが少ないかもしれませんが、できたことを褒め、評価しなければ、「次も頑張ろう」「新しいことを覚えたい」という意欲も湧きません。そして意欲がなければ、成果を出すことはできないのです。

かといって、辞めないよう、甘やかすということではありません。新人の中には仕事に対する考え方が甘く、「まずは社会人としての考え方から教えていかなければ…」と思える方もいますが、仕事に対する姿勢も職場で育てていかなければならないのです。本人の考えや思っていることを聞き、それに対して諭していくことが必要です。怒ったり、無視をしても、成長は望めません。なぜ間違っているのか、なぜ重要なのか、というように目的や理由をきちんと考えさせ、言うべきことはきちんと伝え、理解させていくことが大切です。
仕事の流れや応対の仕方を教える際にも、手が空いているスタッフが教える、先輩の後ろから仕事を見て覚える、などといった場当たり的なやり方ではいつまでたっても新人は育ちません。結局、効率的ではないのです。きちんと専任者を決め、指導計画を立て、その作業の目的を説明し、質問や相談がしやすい状態、練習の場を設ける必要があります。
もちろん専任者に任せておけばよいのではありません。チーム全体が新人を迎え入れよう、助けてあげようという意識で接していくことで「自分はみんなに支えられている、この職場が楽しい、仕事をもっと覚えていきたい、患者さんに上手く接していきたい」と思えるようになるのです。
ベテランスタッフが“お局様”状態で、誰も意見が言えない、逆らえない、という状態になってはいないでしょうか。新人の働き方やすぐに辞めてしまうことを責める前に、自分の職場は他のスタッフにとって居心地が良いのか、みんなが話しやすい雰囲気で活気があるのか、ということを見直してみてください。
ドクターも同様です。スタッフが「話を聴いてほしい」と言ってきても、「忙しいから」と言って後回しにしてはいないでしょうか。スタッフとの信頼関係を築くことができないようでは、患者さんとの信頼関係を築くことも難しいと思います。
患者さんが丁寧な説明や優しい応対を求めているのと同様、スタッフも丁寧な指導や楽しく活気ある職場を求めています。職場の雰囲気、スタッフの満足度に目を向けることはとても重要なことだと思います。