DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

アシスタントのためのイメージアップ講座

第75回(182号)
新人教育順調ですか?〜指導の土台作り〜
株式会社ロングアイランド 接遇講師 伊藤 純子

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100 Dental Magazineアシスタント講座 4月入社の新人スタッフの方々はそろそろ職場、仕事に慣れてきたでしょうか? 新人スタッフが入ってくると、教育係を任されることになるスタッフもいらっしゃるでしょう。いままで、教えられる側だったスタッフが教える立場になった時、これまでとは違うストレスや悩みを抱えていると聞くことがあります。 あるクリニックで、先輩から新人の指導状況について聴きました。「教えていることを素直に言うことを聞いてくれない。何を言っても必ず、『でも…』と反論してくる」「注意しても、『つまり~ってことですよね。〇〇だと思いました』と“謝る”ということをしない」「忙しい土曜日でも13時ぴったりに何も言わずさっさと休憩に行ってしまう。業務が完了しているならよいが、抜けもある。せめて周りに声をかけてから休憩に行ってほしい」「コロナ禍なのに、勝手にお昼に外食に出ていた」など、きりがないほど新人に対する悩みが出てきました。 そして、最後に、「いろいろ文句のように言ってすみません。新しいスタッフが入ると、私もいかに迷惑をかけてきたのかと痛感しています。自分の行動も気をつけようと思います」と反省していらっしゃいました。 これらの悩みは作業スキルの上手下手のことではありません。仕事に対する意識の問題です。 明らかに、責任感、上下関係のけじめが理解できていない、など、社会人としての意識の切り替えができていないから起こっている事象だと思います。 今回は、新人の指導をするうえで必ず押さえてほしいことをお話ししたいと思います。   歯科医院に限らず、企業でも新人の指導は教育係という人が設けられ、日々の指導を任せることがあります。「社会人の人生は最初の上司、先輩で決まる」「入社後3年間で受けた指導が、その後のその人の成長を左右する」と言われるように、新人の成長は教育係の関わり方に大きく左右されます。 新人を指導する目的は“組織の運営をスムーズに行うこと”です。 そのために指導すべき主な内容は①業務の流れを理解させ、必要な知識やスキルの土台を身に付けさせる②仕事に対する意識、社会人としての基本行動を習慣化させること③組織内での関係をスムーズにするためのマナー、仕事の進め方を理解させること その他にも、クリニックのルールや慣習、制度など身に付けるべきことは多くあります。これらを一気に身に付けることは不可能ですが、新人にとっては、“どんな職場でどんな先輩にどのように指導されたかによってその人の人生を左右する”となると、指導する側も真剣に取り組む必要があります。 実際、指導する場面は営業時間内であることが多いので、①の知識やスキル、仕事の流れを教えることで精いっ新人教育順調ですか?~指導の土台作り~株式会社ロングアイランド接遇講師伊藤 純子Dental Magazine 101Assistance’s Worldぱいではないでしょうか。先輩が作業の手順を説明し、それを見せ、させてみる、違っていたら注意して、やり直させる、という方法が多いかと思います。もちろんこの教え方は間違っていません。 しかし、②の仕事に対する意識や、けじめ、ルール、③の組織内での関係の在り方などにはなかなか触れる機会がないまま指導が進み、後々問題が出てきて悩んでしまう…ということもあるようです。 最初が肝心です!まず、作業を教える前に、まず、学ぶ姿勢や仕事に対する取り組み方を教えましょう。・今までの学校や友達との関係ではないということ(けじめが必要)・お金をいただいているということはそれだけ、責任と成果が求められるということ・お金をいただきながら、学ぶ機会が与えられているということはクリニックにとっては先行投資であり、学んだことは自身の財産になるということ これら仕事に対する意識、学び方、社会人としての意識をきちんと理解させてから知識やスキルの指導に入ることで、成長の度合いも大きく変わってきます。出勤・退社時の挨拶はもちろんのこと、休憩に行くときの声掛け、誰かの前からモノをとるときに“失礼します”など配慮する、など、当たり前すぎることですが、その“当たり前”ができていないことが今後に影響するのです。スタッフ同士の仕事上での基本的なコミュニケーションが土台としてできていて初めて気持ちの良い指導、患者対応ができるのです。 もちろん、「もう新人が入ってから半年もたってしまった、すでに問題が出てきてしまっている」というクリニックもあるでしょう。その場合は、“半年を振り返って”などの名目で意見交換の場や勉強会を設け、お互いに仕切り直してみてはどうでしょう。 先ほどお伝えした内容を改めて伝え、話し合うことで、その後の指導の方法、成長のプロセスは改善されるはずです。是非、これらの時間をあえて設けることをお勧めします。 学生から社会人になったことによってどう意識を変えるべきか、どう言動を変えるべきか、をしっかりと理解させ、学ぶ土台を作っていくことは今後の成長、そのスタッフの人生にとってとても重要です。そしてその指導に取り組むことで教育に携わるスタッフの成長にもつながります。大変な役割ですが、自身の成長のためにも挑戦してみてください。

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